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2024.03.31

手仕事の温もりあふれる空間で、個性豊かな木彫り熊に出会う「遊木民」

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手仕事の温もりあふれる空間で、個性豊かな木彫り熊に出会う「遊木民」

かつて“北海道観光ブーム”の到来とともに、「北海道を代表する民芸品」として数多く作られた「鮭をくわえた木彫り熊」。そのかたわらで、各地の職人や作家の手により独自に進化を遂げてきた熊たちが、ここ数年で再び注目を集めるようになりました。

全国各地で開催される「木彫り熊」にまつわる展示やイベントを目にする機会も増え、モダンな空間になじむインテリアや雑貨として、自宅に迎え入れる人も増えているのだとか。

札幌・桑園(そうえん)エリアで「木彫り熊」を中心に幅広い木彫り製品を扱うお店「遊木民(ゆうぼくみん)」を訪ね、“木彫り”の魅力やものづくりの裏側にひそむお話を聞きました。

 

“木彫り”製品の魅力を届ける「遊木民」

お話を聞かせてくれたのは、父の川口 拓二(かわぐち・たくじ)さんとともに木彫りのお店「遊木民」を運営し、自身も「木彫り熊」を彫る職人として活動する息子の川口 直人(かわぐち・なおと)さんです。

祖母の代から受け継ぐ、木彫り製品に特化した観光土産の卸売業を営む川口さん親子は、「木彫り熊」が流行とともに爆発的な人気を誇っていた頃から現在までの需要の移ろいを肌で感じてきたそう。木彫りの魅力を伝えるために新たな形を模索した末、2016(平成28)年にオープンしたのが、工房を備えた店舗「遊木民」でした。

 

お店に置かれるのは、川口さん親子が家業を営むなかで付き合いのある職人のものや、作風が気に入って仕入れているものなど、およそ20名の職人・作家が彫る創造性に富んだ製品たち。なかには平面を浮き立たせるように掘り込んだ動植物を模した「レリーフ」もあり、手仕事の温もりあふれるものづくりに探究心がくすぐられ、思わず見入ってしまいます。

「丁寧に彫られているものは特に好きですね。昔から木彫り製品が好きな方には通じることですが、見ればすぐにわかるんですよ」と、川口さん。その丁寧さは、道具の研ぎ具合や手入れの仕方、“一見気にならないような部分も細かく彫られているか”に表れるのだといいます。

 

“アート”と呼び声高い「木彫り熊」

川口さん作。熊の顔のみを彫った「マスク」

そんな遊木民にならぶのは、大半が「木彫り熊」。北海道・八雲(やくも)町や旭川市で生まれた別々のルーツをもつ熊は、道内各地の職人や作家らによってそれぞれの芸術性が育まれ、現在は“アート”とも呼べる存在に。「憲(けん)ちゃん熊」でも知られる旭川・佐藤 憲治(さとう・けんじ)さんの作品なども置かれ、熊を求めてわざわざ足を運ぶ方も多いのだそうです。

毛並みまで細やかに表現された本物に忠実な伝統的な熊や、「抽象熊」といわれる「面彫り」により形作られたものなど。ポーズもさまざまで、「這(は)い熊」「座熊」「擬人化熊」、顔のみを彫った「マスク」といった個性豊かな作風の熊が、訪れる人を魅了しています。

 

“文化”を守るため、職人の道へ

用途に合わせて、何本もの彫刻刀を持ち変える


川口さんは、卸売業を通した職人との交流のなかで「これは絶対にお客さんに届けたい!」と思えるような、数々の木彫り製品に魅せられてきたのだとか。ただ、ここ数年で再び着目されている「木彫り熊」も、生業として技術を受け継ぐ人が減少している事実に変わりはなく、危機感をぬぐえずにいました。

「技術を受け継ぐ人がいないということは、家業で考えると”仕入れ先がなくなる”ということ。次に出てくる若い人を待っていてもダメだと思い、だったら“自分がやるしかない”というのが彫りはじめたきっかけです」と、語る川口さん。「家業と“木彫り熊”の文化」その両方を残しつづけるべく、職人の道へ歩みだしたのです。

 

川口さん作「ダレ熊」。力の抜けたポーズが印象的


「文化」とはいいつつも明確な流派などがなく、独自性に委ねられた「木彫り熊」の世界。誰かに直接教わることはせず、これまで目に焼き付けてきた職人の製品を思い出しながら、そして時に調べながら、見よう見真似で彫りつづけることで技術をものにしてきた川口さん。

彫る時に大事にしているのは、今も変わらず「“顔”を格好よく彫ること」。「熊にかぎらずフクロウとかもそうなんですけど、その動物を認識する上で一番大事な部分ですし、問屋の時から8割は“顔”で製品を見ていました。それが、今のものづくりに繋がっていると思います。」と、教えてくれました。

 

木材がもつ風合いを、最大限に活かしたい

川口さん作「抽象熊」。同じ形でも、樹種が変わるだけで違った味わいに

最後に「木彫り」の魅力について尋ねると「シナやエンジュ、くるみなど、樹種による肌質のちがい、木目、そして香り。木そのものがもつよさが木彫りの魅力だと思います。それを最大限に活かせるものづくりがしたい。その先のことは、“木自身がやってくれる”という気持ちです。好みもあると思うので、まずはぜひ気軽に見に来てくださいね」と、話してくれた川口さん。

お土産にもぴったりなミニチュア熊。組み合わせ自由なのがうれしい

2024(令和6)年に、「木彫り熊」が誕生してから100年の節目を迎えます。

「自分がもてる力」と「木材がもつ力」が合わさることで木彫り製品の魅力となり、時間の経過とともにその味わい深さを増していく。

「今の自分にできることは、“彫るレベルをもっと高めること”」と、厳しい一面をのぞかせてくれた川口さんの、“理想形の追求”と“家業と伝統を守るため”の試行錯誤の日々はつづきます。

遊木民(ゆうぼくみん)
電話番号:011-614-0535
住所:北海道札幌市中央区北7条西19丁目-1
アクセス:JR「桑園駅」より徒歩12分程度
HP:https://yuubokumin.net/
SNS:https://www.instagram.com/kiisuki1201/ (川口拓二さん)https://www.instagram.com/youbokumin1207/(川口直人さん)
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。