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2024.05.31

日本の童話・童謡が生まれたこの場所で。ギャラリア赤い鳥が紡ぐ歴史と人の縁  

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日本の童話・童謡が生まれたこの場所で。ギャラリア赤い鳥が紡ぐ歴史と人の縁  

アニメや漫画、現代芸術。池袋にはさまざまな文化が入り乱れ、連日たくさんの観光客が足を運びます。そんな街から少しだけ足を伸ばすと、明治・大正時代に児童文学の礎を形作った人物の面影を感じられる場所に辿り着けることをご存じでしょうか。

池袋駅から徒歩約11分、お隣の目白駅からは約4分の場所にあるのは、2015年に建てられた画廊「ギャラリア赤い鳥」。「ギャラリア」は、イタリア語でギャラリーを意味するそうです。

 

名だたる作家・詩人が力を束ね、童話・童謡の礎が作られた場所

名前につけられた「赤い鳥」は、鈴木三重吉が1918年(大正7年)に創刊した童話童謡雑誌「赤い鳥」に由来しています。この場所は、「赤い鳥」とその刊行元である赤い鳥社の発祥の地であり、創刊した鈴木三重吉(明治・大正時代に活躍した小説家・童話作家)の旧宅跡でもあるのです。

当時はまだ、現代の日本で慣れ親しまれているような童謡や童話は存在していなかったそうです。子どもたちの個性や創造性が尊重され、高い芸術性を持った童話と童謡を目指して生み出されたのが、「赤い鳥」でした。鈴木三重吉は自らも作品を執筆しながら、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、有島武郎(ありしま たけお)の「一房の葡萄」、北原白秋(きたはら はくしゅう)の「赤い鳥小鳥」など、多数の名だたる文豪・詩人に働きかけて日本史に残る作品を残しました。

 

被災を経験し、目白の地へ。夫婦で営む、多様な芸術が羽ばたく画廊

ギャラリーの中は、大きな窓ガラスからいっぱいの陽の光が入り込んで輝いていました。壁一面には、墨と顔彩(絵の具)で描かれた絵がいくつも飾ってあります。ギャラリア赤い鳥のオーナーである井汲典夫(いくみ のりお)さんが自ら手がけた作品の数々です。

▲ギャラリア赤い鳥の井汲典夫さん・春江さんご夫妻
傍に掛かる絵は、2022年に外務大臣賞を受賞した作品『赤い木の実』

元々は千葉県習志野市で奥様の春江さんと暮らしていたという井汲さんが、この地に住まいを移されるきっかけになったのは、2011年の東日本大震災でした。震災の液状化現象により半壊した自宅で数年生活したのち、移転先を探し始めた井汲さんご夫妻。奥様の春江さんが池袋の女子高校に通っていたこともあり、近辺で家探しをしていたところ、紹介された先がたまたま目白の「赤い鳥社跡」だったそうです。

「私たちが移り住む前は、イタリア文学者の千種堅(ちぐさ けん)さんの奥様がここで画廊を営んでいたそうです。千種先生に敬意を表し、画廊の名をイタリア語で表記しました。若いアーティストの方に気軽に使っていただける場所にしたいと考え、私たちもギャラリーをオープンしたのです」

ギャラリーでは、絵画や工芸品などの他にも、ジャズコンサートやアニメの原画・ゲームの個展を開催したこともあるそう。ジャンルを問わずさまざまな芸術家の方たちが羽ばたいていけるよう、ピュアな心を大切にしながら応援を続けているといいます。

 

「赤い鳥」がもたらした、あたたかな人との縁

当初はお孫さんの名前にちなんだギャラリー名にしようと考えたこともあったという井汲さん。しかしこの場所と鈴木三重吉との深いつながりを大切にしようと、「赤い鳥」と名付けることに決めました。鈴木三重吉の出身地で「赤い鳥」にかかわる資料を数多く保存している広島市立中央図書館や「赤い鳥社跡」の史跡案内板を設置した豊島区教育委員会にも事前に承諾を得たそうです。

▲ギャラリーに飾られている「赤い鳥」の表紙写真たち
広島市立中央図書館から提供を受けたものです

「画廊を始めて間もないころ、仕事で広島を訪れた際、ご挨拶をと広島市立中央図書館を訪れたことがあったんです。するとその日が偶然にも鈴木三重吉の法事が行われる日だということで、図書館の方が菩提寺に案内してくれ幸運にも参列させていただくことになりました。広島市立中央図書館とは今でも本や資料を送り合うなど、大切なご縁が生まれました」

ギャラリーには、鈴木三重吉のお孫さんも足を運んだことがあるそう。この場所には、「赤い鳥」が育んできたあたたかな人との縁が溢れていました。

 

オーナー夫婦の敬意と愛情が、文化の歴史をつないでゆく

ギャラリア赤い鳥のコンセプトメッセージは、「この地の歴史を心にきざみ」。入り口には、井汲さんがデザインを手がけた赤い小鳥をモチーフにした看板が飾られています。

「どんな場所でありたいか、語るようなことはありません。深い歴史のある場所で、小さなギャラリーが営まれているんだなって、そう感じていただけるだけで嬉しいんです」

つねににこやかに語りかけてくださる井汲さんご夫妻の言葉には、鈴木三重吉やその偉業、そして「赤い鳥」が運んでくれた多くの人々とのつながりに対する敬意と愛情が込められていました。

今、私たちの身の回りに溢れている童話・童謡も、この場所で「赤い鳥」が生まれていなければ存在していなかったかもしれません。ギャラリア赤い鳥には、明治・大正から令和へと受け継がれる文化の足跡が残されています。

 

ギャラリア赤い鳥
電話:03-3565-6101
住所:東京都豊島区目白3-18-7
アクセス:
JR山手線 目白駅より徒歩約4分
各路線 池袋駅より徒歩約11分
HP:http://g-akaitori.com/

*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。