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2026.03.20
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京都市役所を横目に、河原町通りを北へ歩くこと5分。「スイミーあります」と書かれた看板が目を引きます。可愛らしいアーチ型の入口に誘われ、どんなお店なのだろうと覗き込む人も。

店先に置かれた「スイミーあります」の立て看板
ここは、「cozyca products shop HIRAETH(コジカ プロダクツショップ ヒライス)」。「作家の作品と、毎日の暮らしをつなぐ架け橋に」という想いのもと、空間の雰囲気に合った世界観をもつ作家とともに、暮らしに取り入れやすいステーショナリー雑貨を製作、販売しています。

木のぬくもりに包まれた、ほっとひと息つける店内
アーチをくぐり店内に入るとまず目に入るのは、動物や食べ物、日常の情景などがやわらかな線と色合いで描かれたメモ帳やポストカード。眺めているだけで心がふっと温かくなり、思わず「誰に手紙を書こうかな」と使う場面が浮かびます。
「cozyca products」は、1932(昭和7)年に京都で創業した老舗和文具メーカー「表現社」が2013年に立ち上げたブランド。その直営店「cozyca products shop HIRAETH」は2018年にオープンしました。
「表現社」のルーツやブランドに込めた想いやこだわりについて、ブランドを立ち上げたアートディレクター・髙倉英俊(たかくら ひでとし)さんに伺いました。

「cozyca products」と「cozyca products shop HIRAETH」を企画しプロデュースした髙倉さん
「表現社」のはじまりは、明治時代に生まれたお店「田中本店」にまでさかのぼります。1900(明治33)年頃から、私製はがき(民間企業や個人が作成したはがき)をきっかけに、絵や写真で気持ちや情景を伝える絵はがきが広まりました。鉄道網の発達とともに旅の記念としてはがきを送ることも習慣となり、絵はがきは暮らしの中で親しまれていきます。
もともと京都には日本画家や図案家、絵師に加え、版元や職人、紙商などが関わる制作と流通の土壌があり、絵を商品として届ける文化が根付いていました。こうした背景から「田中本店」は絵はがき文化を支える存在となります。その後、技術や信念を受け継ぐかたちで1932(昭和7)年別会社「秀英堂」が誕生し、のちに「表現社」へと名を変え現在に至ります(やがて「田中商店」と合併)。

当時の和柄の絵はがき
絵はがき文化は、その後も形を変えながら受け継がれていきます。第2次世界大戦後、日本に滞在していた多くの進駐軍から「日本らしい和柄のクリスマスカードを家族に送りたい。」という声が寄せられ、「表現社」は制作を始めます。
やがてそのカードは日本の企業にも知られるようになり、海外の取引先へ贈る年末の挨拶としても選ばれるように。こうして和柄のカードは「表現社」を代表する存在となり、事業も大きく成長していったといいます。
しかし、時代が移り変わるにつれて、企業間で交わされる贈答文化も少しずつ形を変え、クリスマスカードを贈る習慣はだんだんと少なくなっていきました。長く続いた事業も、惜しまれつつ幕を下ろすことになります。そして、その転機に重なるように、新たな挑戦として生まれたのが「cozyca products」でした。

さまざまな作家のメモ帳が並ぶ
「表現社」に携わる前は、和紙の図案制作に携わっていたという髙倉さん。「表現社」に入社後に和文具の企画を検討することになった際、「“和”とは何か」について改めて考えたのだそう。
「日本には感性豊かな作家が数多くいて、その才能をもっと世の中に届けたい。そして、作家の作品を通して人々の暮らしを豊かにできたら。」と髙倉さん。
作家の絵やデザインを印刷した商品を作り、作家名を添えて届ける。それを手に取った人が作家を知り、展覧会を訪れ、原画を購入してくれるかもしれない。そんな新たなつながりのきっかけを作りたいという想いのもと立ち上げたのが「cozyca products」だったのです。

髙倉さんが生み出したバンビのロゴマーク
ブランドを立ち上げた当初、想定していたお客さんは主に女性でした。 女性に親しまれるモチーフを探していく中で、「バンビ」の可愛らしさがブランドの雰囲気に合うと感じたとのこと。
「店で心地よさを感じ、手に取った商品が日々の暮らしをそっと潤してほしい。」という願いから、“こじか”と、“心地よい”を意味する“cozy”を組み合わせ、「cozyca」という名前が生まれました。
ショップ名の「HIRAETH」はウェールズ語。「故郷のような戻れない場所への郷愁、そしてそこに誇りを持つ心」と解釈し、過去に戻ることはできなくても、「表現社」としての誇りを胸に次の時代へ。そんな想いがこの名に込められているのです。

思わず足を止めたくなる、アーチ型の入口
「cozyca products」が動き出した当初は、グラス作家のSubikiawa.(スビキアワ)さんとの取り組みから始まりました。その後、一緒に商品を作ってくれる作家さんと出会うため、髙倉さんが自ら足を運んだり、個展の場で声をかけたりしたのだそう。そうした積み重ねの中で作家たちとの関係性も少しずつ育まれ、今では30名を超える作家の作品が店内を豊かに彩っています。
「ありがたいことに、『cozyca products』で商品を作るのが夢だと言ってくださる作家さんも増えました。」

たくさんの作家とコラボレーションした商品が並ぶ
「京都はお寺や神社が多く伝統文化が受け継がれている土地ですが、芸術大学もたくさんあり若者が学び、活動しているので、伝統を守りつつも進化していきたいですね。また、京都に限らず、作家さんが活動する土壌づくりがブランドの使命の一つなので、今後もその想いを忘れずに企画をしていきたいです。」と髙倉さんは話します。

スタッフ愛用のメモ帳も並び、アートが日常にとけ込む様子が伝わる
若い頃にロンドンで働いた経験をもつ髙倉さん。ロンドンでは、アートと生活との距離が近いと感じたのだそう。日本でも作家作品がもっと人々の暮らしに溶け込めば、日常はきっと豊かになる。そんなことを思いながら始まった「cozyca products」は、作家ブームの先駆けのーつとして多くの支持を集めています。そして世の中が移り変わり、今はかなり生活とアートが近くなってきたと感じているとのこと。
そんな「cozyca products」では、紙文具を中心にしながらも、店内にはアクセサリーや食器などアートを身近に感じられるグッズも扱っています。
「ブランドを急に大きく広げることはせずとも、作家との関係性や活動を大切にしながら、ゆっくり成長していけたら。」と、今後について語る髙倉さん。
時代が移り変わっても、「表現社」が大切にしてきたのは、「こころを伝える」文具づくり。はがきや手紙を通して、季節のあいさつや相手を気遣う気持ちなど、人の思いを丁寧に届けるという原点は変えず、「変わらないまま変化したい」。その言葉の通りに「cozyca products」は作家や作品と暮らしをつなぐ架け橋となり、人々の暮らしを豊かにしています。
cozyca products shop HIRAETH
電話:075-253-0640
住所:京都府京都市中京区指物町322
アクセス:京阪電車「神宮丸太町」下車徒歩8分
京都市営地下鉄東西線「京都市役所前」下車徒歩10分
HP:https://cozycaproducts.net
SNS:https://www.instagram.com/cozycaproducts/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。