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2026.08.20

石畳の小路に息づく、京都の木版印刷「竹笹堂」

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石畳の小路に息づく、京都の木版印刷「竹笹堂」

呉服商の街として栄えた室町通を西へ。四条通と綾小路通を結ぶ石畳の小路「膏薬辻子(こうやくのずし)」は、平安時代の僧・空也が平将門の霊を供養した「空也供養」が名の由来と伝わる、風情ある一角です。

繁華街の喧騒がうそのように静かなこの辻子に、京町家の工房兼ショップ「竹笹堂(たけざさどう)」があります。

1891(明治24)年創業の木版印刷職人工房「竹中木版」を母体とする「竹笹堂」は、機械印刷の台頭で取り巻く環境が変わるなか、5代目・竹中健司(たけなか けんじ)さんがショップ開設やオリジナル商品開発、彫りの内製化へ舵を切り設立。いまも手仕事による木版印刷を受け継いでいます。

京都で育まれた「京版画」の歴史

明治期に建てられた京町家を工房にする「竹笹堂」

明治期に建てられた京町家を工房にする「竹笹堂」

木版印刷は、仏教の伝来とともに経典の文字を摺ることから始まった、世界最古ともいわれる印刷技術です。同じ技術が、江戸と京都でそれぞれに花開きました。

江戸で庶民の娯楽として浮世絵が発展した一方、京都では御所に納める絵をはじめ、うちわや扇子、西陣織の図案見本、和菓子の掛け紙まで、工芸や出版と結びついて多彩に広がります。これが「京版画」です。

材料や道具は江戸と大きく変わらず、摺師(すりし)同士の交流もあったといいますが、しっかりと摺り込む浮世絵に対し、京版画は紙をこすらず色をふんわりと乗せるのが特徴とのこと。多品種の品物に応じて、数多く積み重ねられてきた繊細な技の積み重ねが、京版画ならではの表現を支えています。

「彫り」と「摺り」が同居する、珍しい工房

畳敷きの店内。靴を脱いでじっくりとお気に入りを探すことができる

畳敷きの店内。靴を脱いでじっくりとお気に入りを探すことができる

木版印刷は企画・販売をする「版元」・絵を描く「絵師」・版木を彫る「彫師」・摺りを行う「摺師」による分業の世界ですが、「竹笹堂」は、摺師だけでなく彫師も同じ屋根の下に抱える珍しい工房です。「もう少しこう彫ってほしい」「こう摺りたい」という意思疎通がすぐにできるため、ものづくりの精度が高まります。

摺りを担うのは6代目・原田裕子(はらだ ゆうこ)さん。鹿児島県出身で、摺師を目指した原点は小学校の授業で味わった木版画の楽しさでした。

「美術に携わりたい、京都で学びたい」との思いから京都教育大学へ進み、教育実習で木版画を教える道具を探すうち、5代目の竹中さんと出会います。その後原田さんは竹中さんに弟子入りし、以来20年あまり、摺りにデザイン、教室の講師まで幅広く担ってきました。

手で覚える、摺りの仕事

摺り上がったばかりの「うさぎつなぎ」

摺り上がったばかりの「うさぎつなぎ」

工房で摺られているのは、原田さんがデザインしたブックカバー「うさぎつなぎ」。うさぎが連なる図案には、ご縁がつながるようにとの願いが込められています。

手摺りの難しさは、一枚一枚を同じ品質で摺り続けることにあります。その鍵を握るのが、紙の湿り具合です。木版印刷では、湿らせた和紙に色を摺り重ねていきますが、湿度によって紙は伸び縮みし、少し乾くだけで絵の位置がずれてしまいます。だからこそ、摺り始めの湿り具合を手の感覚で覚え、最後の一枚まで同じ状態に保ち続けなければなりません。

バレンを細かく動かしながら一枚一枚、丁寧に摺り上げていく「摺り」の工程

バレンを細かく動かしながら一枚一枚、丁寧に摺り上げていく「摺り」の工程

原田さんはこれを、料理の加減にたとえます。分量を計っても、調整し仕上げるのは経験で見極める感覚の世界。しかも「竹笹堂」は多品種を手がける工房ゆえ、扇子や掛け紙など品物ごとに勝手の違う技を、数多くの引き出しとして持っておく必要があるといいます。

手摺りのぬくもりと、これから

ブックカバーやぽち袋など、京都旅のお土産にふさわしいアイテムが多数揃う

ブックカバーやぽち袋など、京都旅のお土産にふさわしいアイテムが多数揃う

手摺りの魅力は、絵の具が紙に「載っている」質感にあります。手に取ると伝わる、ほのかな立体感と絶妙な濃淡。同じ図柄でも、印刷では出せない温もりがそこにはあるのです。

「竹笹堂」では、オリジナルのブックカバーやぽち袋を扱うほか、神社仏閣に眠る古い版木の修復や摺り直しといった依頼も多く寄せられ、日本の文化を静かに支える役割も担っています。

「京都が育んできた伝統工芸を自身の作品にも取り入れていきたい。」と話す原田さん

「京都が育んできた伝統工芸を自身の作品にも取り入れていきたい。」と話す原田さん

原田さんが見据えるのは、これからのデザイン。「染めや織(おり)、陶芸や漆芸などのあらゆる工芸から、配置や色の重ね方のヒントを得て木版画に生かしたい。」と語ります。

高価な作品から手軽なブックカバーまで、どの分野でも木版印刷の面白さを伝えていく。ホテルから歩いて訪ねられる工房で、そんな手仕事の魅力に触れることができます。


竹笹堂
電話:075-353-8585
住所:京都府京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町737
アクセス:阪急京都線烏丸駅から徒歩8分/京都市営地下鉄四条駅から徒歩8分
HP:https://takezasado.com/
SNS:https://www.instagram.com/takezasado.shop/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。