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2025.09.10
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浅草寺の北側に位置する花川戸(はなかわど)エリアは、古くから「履物の街」として知られています。隅田川にほど近く、舟で運ばれてくる草履や下駄の材料が入手しやすかったことから、江戸から明治にかけて多くの鼻緒職人がこの街に移り住みました。
その後は洋装の普及が追い風となり、花川戸の靴産業は急成長。最盛期の昭和初期には、250軒を超える靴問屋がひしめき合っていました。現在はその数を大きく減らし、かつてのにぎわいは薄れつつありますが、点在する老舗工房の姿が、当時の面影を伝えています。
そんな歴史ある街の一角に、2023年にオープンしたのが「TOKYO KIMONO SHOES」。廃棄される着物を再利用した「着物スニーカー」を販売する靴屋です。
製造を手掛けるのは、花川戸で半世紀以上にわたり靴を作り続けてきた熟練の職人たち。日本の伝統衣装と匠の技が融合する「着物スニーカー」の魅力を、社長の河村晶太郎(かわむら しょうたろう)さんに伺いました。

華やかな「着物スニーカー」が一堂に会する店内
和の趣に満ちた店内。赤や紫、ゴールドなど、鮮やかな着物をあしらった色とりどりのスニーカーが並びます。
スニーカーは本革製で、すべて職人の手作り。お店には常に250足ほどの在庫を揃えており、ポップなデザインからシックで落ち着いた雰囲気のものまで、多彩なバリエーションの中から選ぶ楽しみがあります。 オーダーメイドも可能で、約30種類の着物の中から好きな色柄を選び、ソールと靴紐の色をチョイス。世界に一つしかない、自分だけの一足を注文することができます。

着物の柄や革の色で印象が異なる
「着物のどの部分を切り取るかで印象が変わりますし、靴の左右で柄が違うところも味わい深いですね。」
河村さんの言葉通り、同じ着物から作られていても、全く異なるデザインに仕上がるのがポイント。生地が持つ質感や装飾まで考慮した精巧さに、思わず見入ってしまいます。

革の厚みを一定に保つ革漉き(かわすき)の様子。職人の力量が試される重要な工程
一足の仕立てに携わる職人は、およそ20人。裁断や縫製など全6工程を連携プレーで進め、製作期間は2か月に及びます。
特に難しいのが、革漉き(かわすき)と呼ばれる革の厚みを調整する作業。厚みが一定でないと履いた時に違和感が残るため、視覚や指先の感覚で微調整していきます。

補強した着物を中底に固定させる縫製の工程。たるみが生じないよう慎重に作業する
着物を反物に戻し、裏張りをして補強するのも大切なプロセス。着物のままだと靴としての強度を保てないため、生地の特性に合わせて一枚ずつ手仕事で加工するそう。
「浅草の靴作りの技術に支えられていますね。着物も革も、靴の材料は全て浅草で賄っているので、着物スニーカーは正真正銘Made in浅草なんですよ。」

プライベートでも「着物スニーカー」を愛用している河村さん
河村さんが「着物スニーカー」と出会ったのは、「TOKYO KIMONO SHOES」をオープンするわずか1年前。「日本のコトモノで世界を喜ばせる」というミッションを掲げ、自身の会社を設立した直後のことでした。
「会社を作ったものの、何を売るかは決まっていない状態でした。売る物を求めて日本中を探し回っていたときに『浅草に着物シューズの職人がいる』と聞き、工房に伺いました。目にした瞬間、『これだ!』と思いましたね。」
その工房こそ、現在の「TOKYO KIMONO SHOES」の商品の大半を手掛けている株式会社アクスト。花川戸で70年以上の歴史を持つ靴工房です。
「スニーカーという実用性、美しいデザイン、希少性。全てが突出していて、これぞ日本のクラフトマンシップだと思いました。『うちの会社で売らせてほしい』と頼み込んで、お付き合いが始まったんです。」

反物に戻した着物。廃棄品だったとは思えないほど美しい
「着物スニーカー」の最大の特徴は、捨てられた着物を活用するアップサイクル品であること。日本国内では、30兆円相当の着物がタンスに仕舞われたまま眠っていると言われており、その着物の多くは、再び役目を果たす日を迎えることなく廃棄されていきます。
「破棄の現場を目の当たりにしたときは衝撃でした。もともと数十万円の価値があったであろう着物が、山のようにドカッと積まれているんです。きれいな着物ばかりですよ。『もったいない』その一言でした。」

廃棄された着物を靴の形に裁断する型抜きの工程
ごみとして捨てられた着物に、新たな命を吹き込む―。河村さんの取り組みはSDGsの観点でも注目され、海外メディアでも取り上げられました。ですが、「TOKYO KIMONO SHOES」が目指すのは、ただ着物を再利用することだけではありません。
「着物の廃棄自体をなくしたいんです。どの着物にも、持ち主の記憶が詰まっています。おばあちゃんやお母さんが大切にしていた着物を、捨てずに済む方法を提供したいと思っているんです。」
思い描いているのは、着物を洋服やバッグなど様々な形にリメイクするサービス。家族が紡いできたかけがえのない思い出を、カタチとして残していく道を模索しています。

着物パスポートケースなど、外国人観光客には革小物も人気
靴職人の高齢化が進み、技術の継承が課題となっている花川戸の履物文化。廃業者が増える一方で、日本のハイレベルなものづくりに惚れ込み、革靴や下駄などを求めて浅草を訪れる外国人観光客も増えています。
「外国人のお客様は派手な色柄を好むと思われがちなのですが、わびさびの美意識に関心が高く、落ち着いたデザインを選ぶ方が多いので、希望を丁寧にヒアリングするようにしています。」
そう話すのは、小林涼(こばやし りょう)店長。ただ商品について説明するだけではなく、着物に描かれた人物や花について解説したり、日本の織物の特徴や歴史を紹介したりと、和文化そのものへの理解を深めてもらう接客を心掛けています。
「靴も着物も、手間を加え、形を変え、売る相手を変えれば、価値あるものとなって蘇らせることができると思っています。」と表情を引き締める河村さん。
「日本の優れた技術を生かすために、人と人を繋いで、未来に残していくことが僕らの使命です。浅草や日本の魅力を、これからも様々な形で伝えていきたいですね。」

小林涼(こばやし りょう)店長 (左)と河村さん(右)
江戸時代から続く浅草の地場産業に、新たな可能性を示した「TOKYO KIMONO SHOES」。伝統を守りながら革新に挑む姿勢は、やがて街の活力となり、訪れる人々の心を惹きつけることでしょう。
TOKYO KIMONO SHOES
電話:080-9579-4014
住所:東京都台東区花川戸2-16-3 辰巳ビル1F
アクセス:東武スカイツリーライン「浅草駅」から徒歩5分
HP:https://tokyokimonoshoes.com/ja
SNS:https://www.instagram.com/tokyokimonoshoes/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。