2024.08.31
戦後間もない頃、光月(こうげつ)町には長崎県内初の公設野球場がありました。
その後、新たな球場建設により1980(昭和55)年に惜しまれつつ閉場。現在は陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地から相浦川を挟んだ対岸に新しい球場があります。初代球場の跡地には佐世保市体育文化館が建てられ、市民のスポーツや文化の活動場所として親しまれています。
そのような光月町で40年以上愛されているお店が、ジャズバー&レストラン「FLAT FIVE(フラットファイブ)」です。ジャズが盛んな佐世保でお店が愛される理由と佐世保の魅力を伺います。
「ジャズ処」と書かれている赤提灯を目印にお店のドアを開けると琥珀色の光に包まれます。
出迎えて頂いたのは「テルさん」の愛称で親しまれている、オーナーシェフの羽原輝之(はばら・てるゆき)さん。大学進学を機に一度地元を離れましたが、帰郷後は佐世保を代表する百貨店の「別館レストラン」などで料理の腕を磨きました。母親が営んでいたコーヒー&カラオケスナックを転身させ、現在の「FLAT FIVE」に至ります。
「ジャズを流すためにカラオケの機材を無くしたら、客足が3分の1に減りました。それでもジャズを楽しめるお店にしたかったんです。コロナ渦も客足減りましたね。商いは飽きないよ(笑)」
“フラット”にジョークを交えながら転身当時と近年のコロナ渦の苦労など40年の歩みを振り返る羽原さん。時代が移り行く中でもジャズ音楽を楽しめる場所作りに妥協しなかったからこそ、お店が長年愛される理由に繋がっているのかもしれません。
お店で提供する料理は長崎県産や国内産でつくられた手作り創作料理。中でも「デレクライス」は佐世保の隠れた名物として親しまれています。名物の誕生には、一人のミュージシャンとの物語がありました。
きっかけは30年前のこと。メキシコ料理からヒントを得て、オリジナルメニューの開発を進めていたころ、ハウステンボスでミュージシャンとして活動していたアメリカ人のデレクさんがお店を訪れます。後にデレクライスになるオリジナルメニューを帰国を控えた最後の1週間で昼夜十食するほど気に入っていたそう。その姿に感激した羽原さんはデレクさんに「このメニューに名前をつけるよ」と約束をした後、名物のデレクライスが誕生しました。帰国後は、デレクさんに伝わるように英語でレシピを公開。数年後、SNSで再会を果たしました。
「音楽をしている人は、名前を見て音楽のお店だとピンとくるかと思います。だけど、フラ〜っと気軽に来れるようにとも言いますね。プレイヤーは東京や福岡に行ってしまった人を何人も見てきているし…こういった場所で繋がればいいなと思います」
佐世保のジャズシーンについて店内奥にある楽器を見渡しながら語る羽原さん。音楽やプレイヤーに対する羽原さんの想いが「FLAT FIVE」を通じて人々を結び、新たなきっかけが誕生しています。過去には羽原さんと常連さんがバンドを組んで音楽活動をしていたこともありました。
羽原さんが結んでいく人は音楽愛好家だけではありません。第2の居場所として仕事の疲れを癒しに訪れる人も見られます。
「FLAT FIVE」の店名を見て、音楽を求めて店を訪れる人、名物のデレクライスを求める人……佐世保の街を知る方法は様々。ふらっと気軽に食事や音楽を通じて佐世保の魅力に触れることができそうです。
Jazz Bar&Restaurant FLAT FIVE
電話:0956-22-8100
住所:佐世保市光月町2-3 新京パーキング2階
アクセス:西肥バス停「島瀬町」より徒歩4分
SNS:https://www.instagram.com/derekrice1/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。