2024.06.30
NEIGHBORS
私たちは1日の中でどれだけの音を聞いて過ごしているのでしょう。鳴り響くアラーム音で起床してから眠りにつくまでの間、休むことなく大量の生活音を浴び続けています。騒がしい毎日を過ごしていると、気づいたときには疲れきってしまっていることも。
2024年4月に中崎町にオープンした「清浄」は、「音のデトックス」をコンセプトにしたカフェで、注文も声を使わずに行います。清浄の静寂を作り上げるスタッフは、耳が聞こえない・耳が聞こえづらいメンバーで構成されています。
「清浄」を作り上げた、一般社団法人Possible代表の松本はるなさんにお話をうかがいました。
一般社団法人Possible代表の松本はるなさん
障がいが障がいにならない世界を知り、「清浄」が生まれる
松本さんが「清浄」を開いたきっかけは、大学生時代にベトナムで聴覚障がい者の方が働くカフェに訪れたこと。
入店時に「私たちは耳が聞こえないので、注文は筆談でお願いします。お客様同士の会話もできるだけ控え、静寂を楽しんでください」と書かれたメモを渡されたそうです。筆談でコーヒーを注文し、注文通りの商品を受け取り、友人と口パクで『おいしいいね』と話していた松本さん。そのときにふと、『あれ、障がいってなんだ』と疑問に思ったそう。
「音を使わないカフェにおいては、店員さんの耳が聞こえないことは何の障害にもなっていませんでした。環境次第で障がいは障がいではなくなることに気づいて感銘を受けたんです。」
そこで働くスタッフの方々が生き生きと働く様子を見て、日本で障がいを理由に働けない人をゼロにする環境づくりをしたいと漠然と思い始めたそうです。
音を使わずに過ごす「静寂体験」とは
「清浄」の静寂を守るのは、耳が聞こえない・耳が聞こえづらいスタッフの方々。スタッフ同士のコミュニケーションは全て手話で行われます。入店時には、温かみのある木のブロックを使ってお店の楽しみ方を説明してくださいます。
お店の説明が書かれたブロック
それぞれの席には、筆談するためのノートとペンが置かれています。声を使わず、静かなコミュニケーションをとるうちに、少しずつ心が落ち着いていくのが感じられます。
筆談用のノートとペン、店内での過ごし方を伝える札が置かれいている
松本さんがベトナムのカフェでの体験から得たのは障がいに対する発見だけではありません。耳を使わずに過ごしたときのデトックス感にも驚いたそうです。
「気づけば何をするわけでもなく、ボーッと雨の音を聞いていました。ボーッとしていたからこそ、ふと障がいのない環境づくりに関して思いつくことができたので、同じようにデトックスをした先に何か新たな発見があるといいなと思います」と松本さんは話します。
自分で点てた抹茶と和菓子を楽しむ
「清浄」ではお客様自らがお抹茶を点てる体験ができます。カシャカシャと抹茶を点てる音が店内に心地よく響き、心が浄化される気分に。
「抹茶を点てる行為も、日本らしいデトックスの方法だと思います。自分が点てた抹茶を味わうことはもちろん、飲み終わった後に残った泡を見たり、美しい器を眺めたり。抹茶が静寂を楽しむカフェのコンセプトに合うと思い、提供しています。」
抹茶を点てたら、優しい甘さを楽しめる練り切りと一緒にいただきます。季節ごとに変わる練り切りは金沢から取り寄せているのだとか。
日々の雑音から解放され、心を癒す場所
「清浄」は大阪らしい賑やかな場所の中で、音のデトックスができる唯一無二のカフェ。
「五感のうちの一つ、耳を解放してあげられる空間を提供できるので、忙しい毎日に少し疲れてしまった方がいたら、ぜひ来ていただきたいです。」と話す松本さん。
静かな時間を過ごすのは意外と難しい。「清浄」は騒がしい日々から私たちを解放する、心安らぐ時間を提供しています。
清浄
住所:大阪府大阪市北区中崎西1丁目10-13
アクセス:大阪メトロ谷町線中崎町駅2番出口から徒歩5分
SNS:https://www.instagram.com/shojo_cafe/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。