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2026.07.10

多くの人が行き交う町田駅から北西に約5キロ。深い緑に囲まれた谷あいの地に、曹洞宗の禅寺「東向山 簗田寺(とうこうざん りょうでんじ)」があります。
創建は1629(寛永6)年。この地を納めていた旗本である簗田家がこのお寺を一族の菩提寺として整えたことから、寺院の歴史は始まります。その後、日曜参禅会や文化講座などを通じた地域の人々の心の拠り所として、約400年の歴史を刻んできました。そして今、この場所は新たな役割を担い始めています。
根底にあるのは、先代の住職が志した「いつも人がいるお寺」という思想です。特定の目的がなくてもふらりと立ち寄り、ただそこに居ることができる。そんな空間を目指し、豊かな自然環境を守り継ぎながら、訪れる人々に心地よい時間を提供しています。

柔らかな光に包まれ、落ち着いた時間が流れる精進食堂「ときとそら」の店内
「簗田寺」は2023年、敷地内に食堂「ときとそら」をオープンしました。かつて倉庫や住居として使われていた庫裡(こり)と呼ばれる建物を改装して作られた空間です。
この食堂は、高名なシェフや特定の料理を目当てに訪れる場所としては設計されていません。お寺という場所で思いがけず美味しい食に出会う純粋な喜びを分かち合うため、独自の運営スタイルがとられています。それが「中心を作らない」ことです。
住職の齋藤紘良(さいとう こうりょう)さんは「特定の誰かの個性が強くなりすぎないよう、中心となる人物を作らないことを意識しています。一つの形に固まってしまうのを避け、常に循環して流れゆく場にしていくためです。」と語ります。

食堂「ときとそら」では、月・火・水曜日には「精進カレー」を、金・土・日曜日には限定で「精進御膳」を提供しています。ひと月ごとに内容が変わる特別な献立となっており、寺の境内や近隣で採れる植物がふんだんに使われているのが大きな特徴です。
例えば6月に提供された「初夏の庭御膳」では、寺の庭で採れた蕗(ふき)や筍、茗荷などが使われていました。一口含めば、豊かな香りと滋味深い味わいが広がります。
もっちりとした発酵玄米や、サクサクに揚げられた車麩のカツなど、食感の変化を楽しめる工夫も凝らされています。精進料理といえど確かな食べ応えがあり、心も体もしっかりと満たされます。

「簗田寺」では、坐禅や写経といった本格的な禅体験をすることが可能です。そして現在、それらと並んで人気を集めているのが、自らの手で香りを調合する「お香づくり体験」。
この体験で特徴的なのは、寺の近隣で採集されたいちじくやしそ、ローズマリーなどが、お香の原料の一部として活用されている点です。

体験ではまず、「簗田寺」の担当職員からお香の基礎について座学で教わります。その後、小瓶に詰められた多様な粉末状の原料から自身の好みのものを選び、手元の乳鉢で時間をかけて丁寧にすり合わせていきます。
適量の水を加えて、成型。そうして出来上がったオリジナルの線香は持ち帰ることができます。

「訪れた人が自身の人生を静かに考えられる場所になれば。」と語る、「簗田寺」住職の齋藤さん
「簗田寺」は「500年先」を見据えて日々の運営に取り組んでいます。食堂や様々な体験プログラムも、その長い計画の一部にすぎません。
「すでに第8弾くらいまでの構想があるんです。一度始めたことをたびたび分解し、合成をするクセをつけておくことが、遠い未来までこの場を保つことに繋がる。」と齋藤さん。今うまくいっている形であっても、現状に安住せず自ら変化を加えていく。その柔軟な姿勢こそが、長期的な持続可能性を高めるという考え方です。
豊かな緑に囲まれた「簗田寺」。ここが町の人々やふらりと訪れた旅人にとっても気軽に足を運べ、心を癒す居場所として必要とされ続けるために、小さくとも確かな変化を続けています。
東向山 簗田寺
電話:042-791-0602
住所:東京都町田市忠生2-5-33
アクセス:町田駅よりバスで約20分、バス停より徒歩約5分
HP: https://ryoudenji.net/
SNS: https://www.instagram.com/ryoudenji/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。