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2026.04.15

120年以上受け継がれてきた、名古屋のつげ櫛。なめらかなとき心地を支える職人技

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120年以上受け継がれてきた、名古屋のつげ櫛。なめらかなとき心地を支える職人技

名古屋駅から車で15分ほど足を延ばした閑静な住宅街に「櫛留商店」があります。1903(明治36)年創業の同店は、東海地方でただ一軒、手作りのつげ櫛をつくる老舗です。相撲や歌舞伎の世界を支えてきた技とともに、使う人の日常に寄り添う一本を届けてきました。

櫛は日常で使うことに意味がある

創業時は名古屋城のほど近くに店がありましたが、1945(昭和20)年5月に戦火によって名古屋城とともに消失。一宮(いちのみや)への疎開を経て、翌年に親戚がいた現在地に再び店を構えました。

かつては愛知県内に数十件あったという櫛屋。ところが戦後になってプラスチックの櫛の需要が増えるとともに、櫛屋は減少していきました。櫛作りの伝統を残していくため、同店は1950(昭和30)年頃から相撲や歌舞伎の床山(髷(まげ)やかつらを結ったり手入れしたりする専門職)の道具も手がけるように。

3代目の森信吾さん

3代目の森信吾さん

店内には日本相撲協会など数々の賞状が並び、プロに認められてきた歴史がうかがえます。芸術品のようにも見える櫛ですが、3代目の森信吾(もり しんご)さんは「私は実用品を作る職人です。櫛は使ってこそ意味があるのです。飾り道具ではありません。」と語ります。

本の櫛に、長い歳月をかける。受け継がれてきた手仕事

鹿児島のつげの木を、1年間干して水分を出す

鹿児島のつげの木を、1年間干して水分を出す

プロが使う櫛も日用品の櫛も、その製造工程に変わりはなく、一本一本手間暇かけて作っています。

原料となるつげの木を、1年間陰干しするところから始まる櫛作り。

その後、窯のなかで燻製にする「いぶし」3ヶ月と「陰干し」3ヶ月を最低でも3〜4年繰り返し、櫛の元になる真っ直ぐな板を作ります。

いぶし作業に休みはない。毎日欠かさず木くずがくべられている

いぶし作業に休みはない。毎日欠かさず木くずがくべられている

板を成形して櫛を作る工程で、特に手間がかかるのは「歯ずり」。櫛の突起部分である歯と歯の間を一本ずつ手作業で磨きます。

「歯ずり」の工程で使われる歯ずり棒。道具も一つひとつ手作り

「歯ずり」の工程で使われる歯ずり棒。道具も一つひとつ手作り

トクサという植物の茎を煮て乾燥させることで、研磨剤になる

トクサという植物の茎を煮て乾燥させることで、研磨剤になる

この工程で使うのが、手作りの「歯ずり棒」。トクサという植物や紙やすりで作った数十種類の歯ずり棒を使い分けながら、小さな櫛でも5000回以上、魂を込めて磨き上げていきます。この丁寧な仕事が、髪をとくときのなめらかさを生み出しているのです。

「歯ずり」が完了した櫛の歯。先に向かって細くなっているのが分かる

「歯ずり」が完了した櫛の歯。先に向かって細くなっているのが分かる

多様な櫛から自分に合ったものを選ぶ楽しさ

店頭には、昔から愛されている洗練された形が特徴な「とき櫛」、厚みがあって握りやすい同店オリジナルの「すす櫛」など、形も目の粗さも違う多様な櫛が並んでいます。「用途、予算、髪質などに合わせて私たちがアドバイスするのでご安心ください。」と4代目の森英明(もり ひであき)さんが教えてくれました。

「品質は下げない」——次の100年につないでいく覚悟

3代目の森信吾さん(左)4代目の森英明さん(右)

3代目の森信吾さん(左)4代目の森英明さん(右)

使い込むほどに手と髪に馴染むつげ櫛。その伝統を守ってきた3代目の森信吾さんは、櫛づくりに携わって今年で67年目を迎えます。

そんな父の背中を見て育ち、「自分が継がなければ伝統が途切れてしまう。」と危機感を覚えた三男の英明さんは、22歳のときに4代目として入職。「これから先も、品質を下げることだけはしたくありません。」という言葉に、次の100年へつないでいく覚悟を感じました。


櫛留商店 

電話:052-991-3759 
住所:愛知県名古屋市北区駒止町1丁目60
アクセス:名古屋市営地下鉄 黒川駅から徒歩15分
HP:https://kusitome.com/

*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。