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2024.10.20

親しみやすく、奥深い。「おりがみ会館」で折り紙の豊穣な文化に浸る時間を。

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親しみやすく、奥深い。「おりがみ会館」で折り紙の豊穣な文化に浸る時間を。

箸置きの袋で犬をつくってみる。封筒の代わりに、お手紙を折って少しおしゃれにする。誰かに思いを馳せながら折る千羽鶴。ちょっとした工夫で楽しむことができる折り紙は、日本に馴染み深い遊びの一つです。しかし、折り紙の歴史を辿っていくと、折り紙が単なる昔遊びではなく、日本の土壌に紐づいた文化であることが浮かび上がってきます。

ホテルリソルステイ秋葉原から徒歩20分ほどにある「お茶の水 おりがみ会館(以下、おりがみ会館)」は折り紙の文化を発信している場所です。館長の小林一夫(こばやし・かずお)さんは、おりがみ会館を拠点として、折り紙の歴史と文化を40年以上にわたり国内外に紹介しています。

おりがみの歴史と文化をきちんと伝える場所として

折り紙は伊勢神宮の神事で紙を折り始めたことが起源となっていると言われています。室町時代には、公家同士で贈り物を包むために紙を折るようになったことで、その文化が武士にも伝わり、折り紙が儀礼の側面から発展していきます。

明治時代になると、西洋化の動きに伴い、ドイツのフレーベルが提唱した紙を折る教育方法が日本で紹介されました。その結果、折り紙が教育現場でも使われるようになり、折り紙がより親しみやすいものとして多くの人に普及していきました。折り紙はその時代に合わせた形で日本独自の文化として発展してきたのです。

1858年、小林さんの祖先にあたる小林幸助氏が染め紙業「染め紙屋」を始めたことからおりがみ会館の歴史は始まります。明治時代には、染め紙屋が世界初の教育用折り紙を製造し、戦後には文部省選定の折り紙をつくる企業「小林染紙店」としておりがみの文化を支えてきました。

染め紙業の4代目である小林さんがおりがみ会館をオープンさせるきっかけとなったのは「おりがみの文化をきちんと伝えたい」という想いでした。 強い使命感を持った小林さんは1972年におりがみ会館をオープン。40年以上国内外を飛び回りながら、折り紙の文化を伝える活動を続けています。

伝えたいのは折り方だけではなく、その背景にある文化

玉虫色の染め紙をしているところ。  刷毛で塗り重ねていくことで独特の光沢を生み出している。

玉虫色の染め紙をしているところ。 刷毛で塗り重ねていくことで独特の光沢を生み出している。

小林さんが折り紙の文化を伝えるために大切にしていることは、その素材の背景を知ってもらうことです。「何事も文化の背景にある素材のことを知っていないと専門家とは言えないと思います」と小林さんは強調します。

その言葉通り、おりがみ会館では折り紙の素材となる「紙」を染めている工房が併設されています。工房の作業は不定期ですが一般公開されており、刷毛染め、浸し染めほかさまざまな方法で和紙を染めている様子を見学することができます。

おりがみを展示するだけではなく、素材にもしっかり光をあてること。染め紙業を生業にしているからこその取り組みが、おりがみ会館の奥深い魅力を支えています。

言葉ではなく、姿で伝える

実演の様子

実演の様子

小林さんは普段からおりがみ会館で多くの人に実演しながら、折り紙の文化を伝えています。近年、おりがみ会館は海外のガイドブックに掲載されたことで、海外からのお客さんも非常に増えたそうです。

海外のお客さんに折り紙の文化を伝えるのは少し難しそうに感じますが、小林さんは「全然難しくない」と断言します。

「僕は講演を重ねていくことで、人類は皆兄弟という感覚がだんだんわかるようになってきました。だから、人は1つの仕草が違うことはあっても心は同じだと思っています。僕は英語の文法もでたらめだけど自然と相手に通じますよ。」

そうにこやかに話す小林さん。実演ではできるだけシンプルな方法で折り紙を伝えることと、学び続けることを大切にしているのだとか。

「シンプルかつ簡単に見せることがとても大切です。だから実演でもできるだけ簡単そうに折っている姿を見せるように意識していますね。あと、僕はいつも講演をすることでたくさんの学びをもらっていて、それが健康の秘訣にもなっています。だから常に勉強し続けたいです。」

小林さんの実演では、同じ瞬間に笑いや驚きを共有することで、言葉に頼らずお互いの距離を縮めていきます。その姿の背景には折り紙の文化を押し付けるのではなく、一緒に並んで文化を体験するという姿勢が垣間見えます。

言葉ではなく姿を見せること。それが折り紙の文化を伝えていく小林さんならではの方法なのかもしれません。

おりがみは言葉を超えて、違いを超えて、通じ合える日本の文化

小林さんは折り紙の魅力を「誰でも身近にできること」だと言います。

「どこにでもある素材で、年齢や性別、国籍などいろんな違いを超えて多くの人が楽しめる。それができる日本の文化は折り紙しかないと僕は思っています。」

紙と楽しむ心さえあればできる折り紙。その背景には日本が培ってきた重厚な歴史と先人たちの創造性が秘められています。

折り紙をただの遊びではなく、日本の歴史がつくってきた文化として捉え、きちんと伝え続けていく。小林さんの使命感が、今も多くの人に折り紙の身近な楽しみと豊穣な文化を広げています。


お茶の水 おりがみ会館 
住所:〒113-0034  東京都文京区湯島1-7-14 
HP:https://origamikaikan.co.jp/ 
SNS:https://www.instagram.com/ochanomizu_origamikaikan/ 
※詳細は上記のリンク先にてご確認ください。