2024.07.31
秋葉原から徒歩10分ほど歩いていくと、深い緑の中にひっそりと佇む湯島聖堂が見えてきます。湯島聖堂は江戸時代に建てられた孔子廟であり、後に幕府直轄の学校である「昌平坂学問所」も建てられた場所。今では多くの受験生が訪れる学問の聖地となっています。
湯島聖堂のほど近くにあるのが、「yuruliku」のアトリエショップです。yurulikuはデザイナーのオオネダキヌエさんと池上幸志さんの2人が立ち上げた文具レーベル。シンプルながらも、どこか心をくすぐる文具を丁寧に制作し、販売しています。
いろんな人が使うものを自由にデザインする場所として
yurulikuは会社のデザイナーとして働いていた2人が「自分たちで自由にものづくりができる場所を持ちたい」という想いから生まれました。文具をデザインしようと思った理由は、2人が好きなアイテムであり、「いろんな人が使うもの」だと思ったからだそうです。
「何かを作るんだったら、いろんな年齢や背景を持った人に届けたいと思っていました。文具は誰でもが触れたことのある、多くの人にとって身近な存在です。だから文具を選びました。いろんな人が使えるものをつくりたいという想いは、今でも変わっていません。」
yurulikuは2005年に活動をスタート。最初はお店を持たず、定期的にギャラリーを借りて個展を行いながら、自分たちの作品を発表していました。活動してから5年ほどたったころ、2人はそろそろ自分たちのお店を持ちたいと探し始めます。すると、いつも利用していたギャラリーの方から、とある地下の物件を紹介されます。オオネダさんは物件の内見をしたときのことを振り返り、こう話します。
「物件の近くには、私たちが好きな本がたくさん集まる神保町があり、緑も程よくあっていい場所だなと思いました。物件からは私が好きな鉄道が窓から見えて、ここがいいと運命的に思えたんです。」
2人はその物件に拠点を据えることを即決し、アトリエショップとしてオープン。10年以上経った今でも同じ場所で文具をつくり、届けています。
使いやすく、余白のあるデザインで「愛着」を生み出す
ツールケースなど多くのプロダクトは2人が制作まで担当。
細部までこだわり抜いたデザインは2人が制作まで担うからこそ実現している。
2人が文具をデザインする上で大切にしているのは、「使いやすさ」と「愛着」。愛着を持ちつつ長く使ってもらえるよう、プロダクトには多くのこだわりが詰まっています。
2人のこだわりを象徴するプロダクトが「FLAT tool case」シリーズです。このシリーズはあまりものを持たなくなった現代で、できるだけ身軽に日々を過ごせるようデザインされています。一見するとごく普通のシンプルなプロダクトですが、ポケットの位置やサイズ、仕様からは二人のこだわりが感じられます。
yurulikuにとって大切なキーワードである「愛着」。愛着の持ち方は人それぞれあるなかで、2人が大切にしているのは「なるべく使い方を限定しないデザインをすること」だそう。
「プロダクトは私たちが使うのではなく、買ってくれた人が使いますよね。だからきっと、いろんな人のいろんな使い方がある。だからyurulikuでは、使い方を限定しすぎず、余白も持たせるように意識しています。つくる側の『これがいい』というものを押し付けすぎないように、いつも気をつけていますね。」
作り手にとってのベストではなく、使い手にとってベストな形を探求する。2人のデザインの土台には、常に使ってくれる人への想いがあります。
目指すのは「机の上にある相棒」という姿
創業初期からあるロングセラー「Aka-Aoシリーズ」。
今でも長く使っている人や買い替えにやってくるほど愛されるシリーズだ。
yurulikuは来年で20周年を迎えます。今では、小さなお子様からご年配の方、そして海外から来られる方など、多様な背景を持った人がアトリエショップを訪れています。
yurulikuのプロダクトがお客様にとってどういう存在になって欲しいかと伺ったところ、「相棒みたいな存在ですかね」と池上さんは話します。
「気がついたら、yurulikuのプロダクトが長くそばにあった状態がつくれると嬉しいですね。人は使いにくいと感じた道具を使わなくなります。だから、気がつくと長く使っていたという状態は、それだけプロダクトにいいところがあったということ。だから、yurulikuがそっとそばに寄り添っている相棒みたいな存在になってくれると嬉しいですね。」
池上さんとオオネダさんが自由にものづくりをしたいという想いから始まったyuruliku。yurulikuという名前は、「ゆるり」と「ゆっくり」という言葉が由来となっています。
その名前の通り、yurulikuのプロダクトが多くの人にゆっくりと馴染んでいき、ゆるりと生活に寄り添う「お守り」のような存在になっていく。それが2人にとっての「愛着」であり、目指している状態なのかもしれません。
yuruliku
住所:〒101-0021 東京都千代田区外神田2-1-3東進ビル新館B1
HP:http://www.yuruliku.com/index.html
SNS:https://www.instagram.com/yuruliku/
※営業時間や定休日についての詳細は上記のリンク先にてご確認ください。