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2025.05.19

時代の変遷とともに伝統を更新し続ける「中村人形」

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時代の変遷とともに伝統を更新し続ける「中村人形」

福岡の博多人形は、日本の伝統工芸の一つとして、数百年にわたって愛されてきました。特徴的な造形美と豊かな色彩は、今も見る者を魅了し続けています。そんな博多人形の中で、特に品質を高く評価されているのが老舗人形店の「中村人形」。創業から100年以上続く「中村人形」は、4代にわたってその技術を守りながら伝統を継承してきました。中村人形の歴史を紐解くと、人形を生活の中で大切にしてきた博多の古き良き文化が見えてきました。

博多人形の起源と中村人形の創業

初代中村筑阿弥(なかむらちくあみ)さん

初代中村筑阿弥(なかむらちくあみ)さん

博多人形のルーツは江戸時代にさかのぼります。当時、博多人形は飾りとしてだけでなくお祭りや祈願の際にも使われていました。庶民の中でも身近な手工芸品として親しまれ、その価値は次第に高まっていきます。多くの職人たちが人形づくりに励み、町を支える大きな産業となっていったのです。

「博多人形の長い歴史的背景の中で、人形に祈りを宿す文化が深く根付いていきました。目に見えない祈りを形にするのが私たちの役割です。」そう話すのは人形師の中村弘峰(なかむらひろみね)さん。弘峰さんは中村人形の4代目。現在、日本を代表する人形師として人形づくりの第一線で活躍されています。



中村人形は大正時代に創業。米相場師の家に生まれた初代中村筑阿弥(ちくあみ)さんが手先の器用さを活かして人形師の道を選んだのが始まりでした。それから博多人形の制作技術を確立しながら、細部にこだわった質の高い作品を生み出してきました。

生活と共にある博多人形

福岡大名ガーデンシティー内に設置された中村人形の『大名の大狛犬』

福岡大名ガーデンシティー内に設置された中村人形の『大名の大狛犬』

長く評価され続ける博多人形は、現代においても年間を通して出番が訪れます。太宰府市にある太宰府天満宮で正月に販売される干支の置物もその一つ。この干支の置物は、毎年中村人形が制作し奉納しています。その後、お雛様や五月人形を経て、ゴールデンウィーク頃には「博多祇園山笠」へと活躍の舞台を変えます。

「中村人形では年間のスケジュールに加えて、現代アートや海外の展覧会、企業から依頼される人形づくりも行っています。個人の方からも常に注文が入るので、数年待ちの作品もあります。」と弘峰さんは教えてくれました。

また、中村人形は博多人形としての伝統を守りつつ、より幅広いデザインやテーマに挑戦しています。現代の新しいライフスタイルに合った博多人形が人気を博し、特に観光地としても根強い人気のある福岡においてはお土産としての需要も広がっていきました。加えて、海外展開への取り組みは博多人形が国際展示会でも評価されるきっかけとなり、日本文化を海外に広めていく役目も果たしてきたのです。

2023年春には中村人形の作品を展示/販売するギャラリー「傀藝堂(かいげいどう)」がオープンし、中村人形がつくる博多人形をより身近に感じることができるようになりました。

4代目人形師中村弘峰さんの想い

(左)四代目中村弘峰(ひろみね)さん (右)三代目中村信喬(しんきょう)さん

(左)四代目中村弘峰(ひろみね)さん (右)三代目中村信喬(しんきょう)さん

中村人形の4代目となる中村弘峰(なかむらひろみね)さんは、幼少期から博多人形に囲まれて育ち、日常生活を営むようにその技術を継承してきました。しかし伝統を守り続ける一方で、人形師として新たな時代に即した挑戦も続けています。30年の人形師人生を歩んできた4代目弘峰さんの魅力は、博多人形の文化を大切にした上で、常に技術を磨き現代的な感性を取り入れる姿勢にあります。

「博多人形は時代とともに変化を遂げてきました。今も昔も変わらぬ『祈り』や『想い』を現代らしい姿で表現することで、型にはまらない新しい人形づくりに取り組んでいます。」と弘峰さんは教えてくれました。弘峰さんが制作した博多人形には伝統技術と斬新なモチーフが融合されており、その独創性が多くの人々を魅了しています。

幼少期から人形づくりの道へ

鮮やかな色合いで表現されるキャッチャーをモチーフにした博多人形

鮮やかな色合いで表現されるキャッチャーをモチーフにした博多人形

弘峰さんが産まれて最初に手にした人形は、もちろん博多人形。朝起きて食事をするときも、学校から帰ってからも、当たり前のように人形師が人形づくりをする姿を見て育ちました。「小さいころから物づくりの環境が整っていたため図工が得意でしたし、自分がつくったもので誰かを驚かせたり喜ばせたりすることが好きでした。」と弘峰さん。人形に囲まれて生活する中で、いつの間にか家業である人形師の道を進み始めました。

その後、弘峰さんは単に伝統を守るだけでなく、人形師として新しい時代に即した表現を取り入れていきます。高い技術を評価されながらもそこで満足することなく、新たな学びの場として選んだのが東京藝術大学。弘峰さんはそこで現代アートに出会い、その後の創作に大きな影響を与えることとなりました。

伝統と現代を融合させた独自の作風

映画に登場する怪獣をモチーフにした人形 

映画に登場する怪獣をモチーフにした人形 

弘峰さんは本格的に4代目を就任すると、博多人形特有の繊細な制作技法を守りつつも最新のアート技術を取り入れることで、これまでにない全く新しい作品を生み出していきます。「博多人形は日本の人形づくりの中でも、特に自由度の高い人形だと思っています。もちろん伝統的な技術を身につけることは簡単なことではありませんが、人形のつくり方は時代とともに変化を続けているのです。」と弘峰さんは語ります。



「もちろん博多人形をつくることが一つの仕事ですが、人形師としては木を彫ることも金属を材料とすることも、これからもいろんな挑戦をしていきたいと思っています。初期は周囲の期待を受けながらも活動のまとまりがありませんでしたが、趣味のように人形をつくり続ける中で、自分のスタイルを確立することができました。」

スポーツシリーズ、職業シリーズなど、弘峰さんのつくる博多人形は現代の生活を切り取った題材が多く、斬新ながらも親しみ深いのが特徴です。

世界への挑戦と次世代へのメッセージ

世界で活躍する人形師でありながらユーモア溢れる気さくな弘峰さん

世界で活躍する人形師でありながらユーモア溢れる気さくな弘峰さん

弘峰さんの作品は国内外で高く評価されており、近年はベネチア、台湾、マイアミなどの海外の展示会も数多く開催されています。「評価をいただくことは嬉しい一方で、たくさんの売り上げを出したいという気持ちはありません。自分にとって最も重要な目標は次世代に技術を継承すること。息子たちがどのように影響を受けるかはまだ分かりませんが、高い伝統技術を備えながらもその時代に則した人形づくりが引き継がれていくことを願っています。」弘峰さんは笑顔で語ってくれました。

「最終的には自分がつくった人形が宇宙にまで行けたらいいですね。これからも人々の『祈り』や『想い』を形にするという信念のもと、手の動く限り人形をつくり続けていきたいと思います。」

弘峰さんの人形づくりの技術は途絶えることなく受け継がれ、人形たちはこれからも私たちの人生の節目や特別な出来事において活躍し続けることでしょう。


中村人形 ギャラリー(傀藝堂)  

電話:092-791-5316 

住所:福岡県福岡市中央区桜坂1-10-46 

アクセス:七隈線桜坂駅より徒歩10分 

HP:https://www.nakamura-ningyo.com/ 

 営業時間や定休日についての詳細は上記のリンク先でご確認ください。