Reservation空室検索・予約
航空券付きプラン
提携法人専用予約
2026.02.25
NEIGHBORS

福岡の暮らしに息づく郷土玩具、博多張子(はかたはりこ)。祈りや願いを託す工芸品として受け継がれてきた伝統を、次の時代へと届けようとしている人がいます。博多張子職人・ 三浦智子(みうら ともこ)さん。その歩みをたどります。

端午の節句を彩る“首振り虎”と手のひらサイズの豆虎
福岡の街には、静かに、けれど確かに伝承されてきた工芸品がいくつもあります。その一つである博多張子は、博多を代表する郷土玩具です。「福岡県知事指定特産工芸品」にも認定されており、まさに“博多の文化”そのものとも言えるでしょう。
その歴史は江戸中期にまでさかのぼり、博多御用商人が上方の大阪で張子の技法を学び、この地へ持ち帰ったのが始まりとされています。以来、「起き上がり小法師」をはじめとする張子人形は、庶民の暮らしの中で深く愛されてきました。
時代が移り変わっても、その温もりを感じる存在は残っています。「博多どんたく」の“にわか面”。十日恵比須 の“飾り鯛”。端午の節句を彩る“虎”。そして福を呼ぶ“だるま”。
生活の中で見かける機会は減ってもなお、博多張子は人々の人生の節目を見守り続けているのです。

真剣に作業をする三浦智子(みうらともこ)さん
智子さんが博多張子と向き合うきっかけは、突然やってきました。
2021年に義母の三浦和子(みうら かずこ) さんが病に倒れ、義父となる博多張子職人の三浦隆(みうら たかし)さんの手伝いができなくなりました。隆さんは5代目として三浦家に伝わる博多張子の技法を引継ぎ、博多の伝統を支えていました。
「義母の想いや義父の仕事を支えたい」ただその思いで、智子さんは工房の扉を開けました。最初は軽い手伝いのつもりでしたが、目の前に広がっていたのは想像をはるかに超える手仕事の世界。
「こんなに手間をかけて、作られていたんだ。」
家族を支えるつもりで足を踏み入れた場所で、智子さんは張子の伝統技術に心を奪われていきました。

6代目の智子さんがつくった作品(左)5代目の隆さんがつくった作品(右)。作り手によって風合いが異なる
張子は複数の工程を経てできあがります。まず木製や粘土製の型に、和紙と新聞紙を小麦粉のりで貼り重ね合わせた「合わせ紙」を手で帯状に割いて張っていきます。乾燥後に型から外し、形を整え、下地を施し、最後に絵の具を筆に含ませ、一つひとつ丁寧に彩色するのです。
「湿度や気温によって乾き方が変わります。紙の重なり方一つで表情が変わりますし、彩色はその作品の善し悪しを決めるのでとても集中力がいります。」と智子さん。
どの工程も“手加減”が重要で、決して機械には置き換えられない緻密な作業。 そんな奥深い張子の文化に魅了され、少しずつ職人としての道を意識し始めました。

2025年の馬と2026年の蛇の干支人形
博多張子は人々の祈りや願いを託すための縁起物として大切にされていることでも知られていますが、手の感覚を頼りに進む気の遠くなるような作業を重ねることで、作品の向こうにある“祈りの時間”にも思いをよせるようになったといいます。
そして、本格的に職人として歩み始めた智子さんは、2024年11月11日に自身の屋号「叶夢張子(とむはりこ)」を掲げました。
多くの方の夢を叶える張子でありたい。手に取る人の願いに寄り添う存在でありたい。 智子さんの強い信念が感じられると共に、 自分自身の新しい出発を重ねた名前でもあります。
「張子は暮らしの節目に飾られ、家族の健康や成長、幸せを願う象徴として受け継がれてきました。“叶夢”という言葉には、祈りを受け取り未来へ渡す存在でありたいという、自身の決意を込めました。」と智子さんは教えてくれました。

八女和紙(やめわし)を使った可愛らしい「色和紙だるま」
智子さんの作品には思わず手に取りたくなる愛らしさがあり、手のひらに収まる小ぶりなサイズで明るく豊かな色彩は、見ているだけで心をほどいてくれます。親しみ深い表情は、飾る人の暮らしに自然と溶け込み、空間にやわらかさを生み出します。
なかでも印象的なのが、八女和紙を使った「色和紙だるま」。長繊維の楮(こうぞ)を使って作られる八女和紙特有の繊維らしい風合いと張子の丸みが重なり、作品がもつやさしさを引き立てています。
「『カワイイ!!から伝統工芸の世界へ』をキャッチコピーに、伝統文化に触れていただく橋渡しの役割を担えたら嬉しいです。」と智子さんは語ります。
伝統の型を守りながらも、今の住空間に似合う軽やかな存在感。 新しくて、どこか懐かしい。その絶妙なバランスが智子さんの張子の魅力なのです。

先祖から受け継いだ張子型
伝統工芸を取り巻く現実は、決してやさしいものではありません。依頼が増え、喜ばしい一方で、寝る間も惜しんで制作に打ち込む日々。工数に見合った価格設定の難しさ、型の保全という誰かが担わなければならない重い責任。それでも智子さんは立ち止まりません。
「型は博多張子の命です。その価値を守るために大学と連携させていただき、デジタル保存にも踏み出しました。かたちを残すことは、技と記憶を未来へ繋ぐことでもあると思っています。」
家族も少しずつ智子さんの思いに理解を深め、今では制作を支えてくれる大切な存在になりました。守るべきものは守る。 でも、時代に合わせて変えていく。 その選択こそが、伝統を未来へ繋ぐ道だと信じてー。
手のひらにのる小さな張子の中には、博多の歴史や人々の祈りだけでなく、それを今日まで繋いできた無数の人の時間が折り重なっています。
三浦智子さんの手から生まれる新しい博多張子もまた、この街の暮らしの中で、静かに、確かに、次の時代へと受け継がれていくことでしょう。
叶夢張子
SNS:
instagram:https://www.instagram.com/tom_halyco/
facebook:https://www.facebook.com/tomhalyco
*活動や商品購入についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。
【叶夢張子お取り扱い店舗】
「博多町家」ふるさと館
電話:092-281-7761
住所:福岡県福岡市博多区冷泉町6-10
アクセス:地下鉄空港線「祇園駅」より徒歩8分程度
HP: https://hakatamachiya.com/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。
はかた伝統工芸館
電話: 092-409-5450
住所: 福岡県福岡市博多区博多駅前1-23-2
アクセス:地下鉄空港線・七隈線「博多駅」より徒歩6分程度
HP: https://hakata-dentou-kougeikan.jp/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。