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2026.02.20
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京都の町を歩くと、時折、路地の奥にすっと伸びる煙突に出会うことがあります。京都には古くから銭湯文化が根づき、今も数多くの銭湯が点在。一説によるとその背景には、かつて寺院で行われていた「施浴(せよく)」にまで遡る、長い入浴文化の歴史があると言われているそうです。
現在も、大正や昭和時代のレトロな趣を残す建物が多く、上質な地下水に恵まれていることから“銭湯の聖地”とも呼ばれています。
そんな町で昔ながらの佇まいを守りながら、時代に合わせて歩みを続けている銭湯があります。「ホテルリソルトリニティ京都」からほど近い場所にある「京都 玉の湯」です。1894(明治27)年の創業以来、世代や立場を超え、人々が“肩を並べる憩いの場”として今も多くの人に愛されています。

黄色いタイルと「玉の湯」の文字が目を引く外観
明治の創業から続くこの場所を、石川県から出稼ぎに来ていた現店主の祖父が引き継いだのは、昭和初期の頃でした。真面目で忍耐強い仕事ぶりが信頼を育み、縁あってこの歴史ある銭湯を所有することに。家庭にお風呂がなかった時代には、1日の終わりに湯を求めて列をなすほど、町の憩いの場として親しまれていたそうです。
明治の開湯から大正、昭和、平成、そして令和へ。約130年以上もの間、「京都 玉の湯」は、町の移り変わりとともに歩んできました。現在はお風呂の耐久年数である30〜40年ごとに大きな改修を行い、時代に合わせて少しずつ進化を遂げています。

昭和初期に建て替えられた際の設計図
そして、2009年に現店主である西出英夫(にしで ひでお)さん、晴美(はるみ)さん夫妻が3代目として銭湯を継承。もとは英夫さんの母の体調不良をきっかけに、仕事終わりに銭湯を手伝い始めたのが始まりでした。当初は一時的な手助けのつもりでしたが、家族で話し合いを重ねる中で、次第に「自分がこの場所を守ろう」という覚悟が固まっていったと言います。
継承後、まず取り組んだのが空間の改修でした。昔ながらの趣を残しながらも、水回りの設備や照明、タイルを整えることによって明るく清潔な雰囲気へと刷新。

明るく清潔に整備されている浴室内
「これからも銭湯を続けていくためには、昔のままではいけない。」と英夫さんの言葉から、訪れる方がくつろげるように、必要な環境を少しずつ整えたいとの想いが伝わってきます。
また、晴美さんのアイデアで昔ながらの番台を撤去し、プライバシーにも配慮。女性のお客様から「安心して利用できるようになった。」という声も届くようになり、誰もが心地よく過ごせる場所へと進化していきました。

談話室にかかっている子ども向けのくじ引きボード
「京都 玉の湯」では、訪れるすべての方に心地よく過ごしてもらうために、さまざまな工夫が重ねられています。
その一つが、親子にやさしい空間づくりです。西出さん夫妻は自身の育児経験をもとに、本を読めるスペースを設けたり、小さなプレゼントを用意したり。子どもたちが笑顔になれるような取り組みが少しずつ広がり、「子連れで銭湯に行きやすくなった。」という声も増えているそうです。
また、京都の四季や風習を大切にしたお風呂も魅力の一つ。地域の浴場組合と連携し、ゆず湯や藤袴(ふじばかま)の湯など、季節を感じるイベント風呂を開催することで、地域とのつながりが自然と生まれています。

晴美さんがデザインした「京都 玉の湯」オリジナルTシャツ
さらに、銭湯の魅力を届けるきっかけとなるよう、地元京都を起点に他業種とのコラボレーションやオリジナルグッズの制作にも取り組んできました。現在は「想いに共感できること」や「地域とのつながりを生むこと」を軸に、グッズを通して関わる方たちがあたたかくつながる場所を育んでいます。
浴場や外観のタイル、オリジナルグッズのデザインはすべて晴美さんが担当。「可愛いって言ってもらえると嬉しくて。」と笑顔で話します。その表情には、作品に込めた想いが届いたときの喜びがにじみます。

磨き上げられた蛇口が並ぶ洗い場
銭湯には、家のお風呂では味わえない価値があります。それは、湯を通して人が自然につながっていくこと。毎日のように通う人たちが「こんばんは。」と挨拶を交わし、少しずつ親しみが積み重なっていく。そんな光景が、日常の中に息づいています。
英夫さんは「地域の方たちがいてくれるからこその銭湯です。」と話します。地元の常連さんから旅で訪れた人まで、お湯を通じて言葉が生まれ、ゆるやかなつながりができていく。「京都 玉の湯」には、町のお風呂屋ならではのあたたかさが満ちています。

「京都 玉の湯」の3代目 西出英夫さん、晴美さん夫妻
そのあたたかさを守るために、西出さん夫妻が大切にしているのは“安心と安全”。脱衣所をお日さまのように明るい暖色照明にしたり、設備を一つずつ見直したりと、誰もが気兼ねなく過ごせる環境づくりに丁寧に取り組んでいます。
晴美さんは「世代を問わず、それぞれにとって大切な時間を過ごせる場所でありたい。」と語ります。一人で訪れる方には、電子機器から離れて気持ちを整える時間を。親子で訪れる方には、湯に浸かりながら語り合えるひとときを。年配の方には、誰かと話し心があたたまる時間を。
英夫さんも「お客さん同士が楽しそうに話している姿や、親子が笑い合っている姿を見ると、本当に嬉しくなるんです。」と話します。おふたりの表情からは、日々の出会いと人々への深い愛情が伝わってきました。

晴美さんが一からデザインした「玉」の字が印象的なタイル
「京都 玉の湯」で過ごす時間は、ただ身体をあたためるだけではありません。さまざまな人が自然に集い、湯気の向こうで表情をゆるめていく。肩の力を抜いてくつろげる、町の銭湯ならではのぬくもりが感じられます。
湯に浸かれば自然と気持ちがほどけ、忙しい日々から少しだけ距離を置くことができる。「京都 玉の湯」でのひとときは、心と身体が整えることができる小さな贅沢なのかもしれません。
訪れる一人ひとりが安心して過ごせる場所として、今日も心と身体をあたためる湯を湧かし続けています。
京都 玉の湯
電話:075-231-2985
住所:京都府京都市中京区押小路通御幸町西入ル亀屋町401
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線「烏丸御池駅」から徒歩11分、京都市営バス「京都市役所前」から徒歩5分
HP:https://kyoto-tamanoyu.com/
SNS :
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*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。
*2026年6月21日より店舗建て替えのため一時休業となっております。