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2026.06.20
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千年の都として独自の食文化が育まれてきた京都では、茶の湯の発展とともにお茶に添える和菓子が磨き上げられてきました。今も街を歩くと、至る所に歴史を重ねた和菓子屋が人々の暮らしに四季の彩りを添えています。
そんな数ある和菓子の中でも、日持ちがしやすく形が崩れにくいことから、長く贈り物として親しまれてきたのが「最中(もなか)」です。最中は、種(皮)を焼く「種屋(たねや)」と、餡を炊く「菓子屋」がそれぞれの技を出し合い、一つの形を作り上げていく分業制で作られています。
1947(昭和22)年の創業から70年以上、この種だけを焼き続けてきたのが、最中種(もなかだね)専門店の「種嘉(たねか)商店」です。長い年月の間、和菓子屋を影で支える存在として真摯に種を作り続けてきました。
これまで表舞台に出てこなかった専門店ですが、2020年に現店主である3代目の手によって工房の隣に直営店をオープン。そこには、伝統をただ守るだけではない今の時代に寄り添う「挑戦」の物語が息づいています。

薄く伸ばした餅を、焼き型に合わせ一つひとつ正確に切り分ける
「種嘉商店」の歴史は、戦後間もない京都で初代がのれんを掲げたところから始まります。以来70年以上にわたり、寸分違わぬ品質の種を焼き上げ、京都の和菓子屋へ最中種を卸してきました。
使用されている材料は、滋賀県産の羽二重(はぶたえ)もち米粉と水のみ。小麦粉などは一切混ぜず、代々同じもち米粉を使用しています。粉の状態から仕入れ、蒸して餅状にし、薄く伸ばして、型で焼き上げる。米粒からではなく粉から餅を作ることで、水分の微調整がしやすく、生地の伸びもよくなるそうです。
工程は一見シンプルですが、粉自体に含まれる水分量やその日の湿度など、日々異なる餅の状態と向き合い、指先の感覚を頼りに仕上げていく工程には、長年培われてきた職人の技が宿ります。

京都の路地裏に静かに佇む赤いのれんが目印の「種嘉商店」
卸売を中心としてきた「種嘉商店」ですが、経営改善に向けた一つの策として2020年に直営店をオープン。店舗の開店は、「種嘉商店」にとって大きな転換点となりました。
伝統ある製造現場を維持しながら店舗を構える決断は容易ではなかったと、3代目店主とともに店を支える舟越芳子(ふなこし よしこ)さんは振り返ります。当時は2代目からの反対にも直面し、不安と迷いが大きかったそうです。それでも、「一度やってみて、だめならそのとき考えよう。」という覚悟を決め、直営店の開店へと舵を切りました。

お店奥の工房には、最中種を焼くための焼き型が並ぶ
はじめに挑んだのは、自社工房を活かした新商品の開発。桜エビや抹茶など、さまざまな食材で試行錯誤を繰り返す中、転機となったのはナッツを用いた試作でした。ナッツに含まれる天然のオイル成分が型離れを助け、同時にこれまでにない香ばしさを引き出したのです。
製法と味わい、その両面で初めて確かな手応えを感じた瞬間だったといいます。そうして誕生したのが、看板商品である「種実(たねみ)」です。有機ナッツと、京都の老舗「今村製餡所」の特注餡を使用し、3種類の味わいを作り出しました。

それぞれのナッツの形を模した3種類の「種実(たねみ)」
有機ピーナッツの程よい塩加減が餡の甘さを引き立てる「種実落花生(たねみぴーなっつ)」に、素焼きの香ばしさと濃厚な風味が調和する「種実扁桃(たねみあーもんど)」。この2種には、専用マシンで熱と圧を同時に加えることで、乳製品を一切使わずに仕上げられた自家製のナッツペーストが詰められています。
さらに、自家製キャラメリゼのほろ苦さとカリッとした食感が癖になる「種実胡桃(たねみくるみ)」。卸専門店のプライドを懸けて辿り着いた、伝統と革新の結晶です。
直営店では、この最中種本来のサクッとした食感を存分に堪能できます。持ち帰りだけでなく、店内には小さなイートインスペースも用意。すぐ横に工房が隣接しているからこそ、焼きたての種に出会えることもあります。

3代目店主の妻・舟越芳子さん
コロナ禍という逆風を乗り越えてスタートした直営店。そこには、卸売だけをしていた頃には想像もできなかった、嬉しい変化があったと芳子さんは話します。
これまでは「完璧に仕上げて当たり前」とされる卸売の世界。届く声は不備があったときだけでした。しかし今は、目の前のお客様から直接「美味しい。」という言葉が返ってくる。「お客様の反応を肌で感じられるのが、本当に嬉しいんです。」と芳子さんは微笑みます。
その喜びを糧に、現在は催事への出展など新しい挑戦にも精力的に取り組んでいます。伝統を守りながらも、新しい挑戦を重ね次代へ繋いでいく。その前向きな歩みが、今の「種嘉商店」を支えています。

店内に掲げられた、「種嘉商店」の歴史と想いが綴られた書
小さな工房で焼かれる1枚の最中種には、70年以上にわたり積み重ねてきた技と、美味しさを追求した試行錯誤の跡が刻まれています。直営店という新たな挑戦も、今まで積み重ねてきた伝統の延長線上にあるもの。
看板商品の「種実」には、「種がまた実り、そして訪れる人の心に笑顔の花が咲きますように。」という願いが込められています。
赤いのれんをくぐり、できたての最中を手に取る時間は、守り続けてきた伝統と未来への想いに触れるひととき。丁寧に焼き上げられた最中は、今日も訪れる人の心に、ほっと一息つける安らぎを運んでくれます。
種嘉商店
電話:075-201-3016
住所:京都府京都市中京区車屋町通二条下ル仁王門突抜町317
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線「烏丸御池駅」から徒歩3分、阪急京都線「烏丸駅」から徒歩13分
HP:https://taneka.jp/
SNS :https://www.instagram.com/taneka.monaka/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。