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2026.03.10
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多くの美術館や博物館が点在し、文化の薫り漂う上野の山。その麓に広がる池之端エリアで、凛とした暖簾を掲げるのが「有職組紐 道明(ゆうそくくみひも どうみょう)」です。創業は1652(慶安5)年。徳川家光の時代から池之端の変遷を見守り続けてきた、東京屈指の老舗です。
そもそも組紐とは、数十本の絹糸を組み上げて作られる伝統工芸品のこと。古くは武具や茶道具の飾り紐として、また着物の帯締めとして、日本の装いを支えてきました。店内に並ぶ色とりどりの紐には、370年続く技術と矜持が宿っています。

「道明」10代目の道明葵一郎氏。伝統の保存と、体験施設を通じた新たな発信の両輪を担う
明治以降、産業の機械化が進むにつれて多くの組紐屋が姿を消す中、なぜ「道明」は暖簾を守り抜くことができたのでしょうか。
10代目社長の道明葵一郎(どうみょう きいちろう)さんは、手仕事ならではの表現力と実用性がその理由だと語ります。途中で柄を切り替えたり、糸をグラデーション状に染めたりする複雑な技法は、機械で容易に再現できるものではありません。
さらに重要なのが、手で組まれた紐だけが持つ適度な空気の層と独特の風合いです。
「手組ならではの伸縮性がないと、結んだときに解けやすくなる。そういった機能的な面にも、手組にしか出せない強みがありますね。」
結びやすく、一度締めれば緩まない。道具としての確かな実用性こそが、長い歳月を超えて支持され続けてきた理由です。

理想の色を追求する自社の染め場。職人が白糸から手作業で染め、求める色彩を正確に作り出す
店内に並ぶ組紐を彩るのは、すべて白糸から自社で染め上げた糸です。理想の色を追求するため、店舗上階に専用の染め場を構えています。妥協のない繊細な色彩は、この一貫した工程から生み出されます。
さらに、染め上げた糸を紐にする組み場も同じビル内に設けられています。多くの伝統工芸が分業制をとる中、全工程を自社で完結させるのは、伝統を絶やさないための合理的な判断でもあります。分業制では取引先の廃業によって特定の糸が手に入らなくなる等のリスクがありますが、一貫体制であれば外部環境に左右されません。
妥協なき色の追求と、自立した生産体制。この両輪が、いつの時代も「道明」の組紐を支えています。

作業場での製作の様子。高台と呼ばれる道具を操り、一本一本の糸を正確に組み合わせていく
「道明」には研究機関としての顔もあります。正倉院などに残る歴史的な組紐の調査・復元を100年近く続け、遺物から構造のロジックを解明してきました。
国内の主要な組紐を網羅的に調査するこの活動は、高度な手仕事を維持する同店にしか担えない領域です。かつての精緻な組み方を途絶えさせず、生きた文化として未来へ繋ぐという使命感が、この地道な研究を支えています。
解明された往時の構造や知見は、単に商品として復刻するにとどまらず、ネクタイをはじめとする現代の洋装品開発にも応用されています。歴史的な美を今のライフスタイルに落とし込むことで、組紐は現在進行形の文化として息づいています。

所狭しと並べられた帯締め。手作業で染め、組み上げられた紐が鮮やかなグラデーションを描く
道明葵一郎さんは次のように語ります。
「和服が非日常となった今、組紐は意識しなければ見過ごされてしまいます。だからこそ、日本で独自の発展を遂げたこの歴史ある技法を、洋装の方や海外の方にも広く届けていきたい。」
その理念を体現する場所の一つが、神楽坂にある体験施設「Kumihimo Experience by DOMYO」です。ここでは歴史的な資料や復元された文化財を見学するガイドツアーで知識を深めたのち、実際に組紐づくりを体験することができます。知的好奇心を満たし、組紐を通して日本文化に触れられる場として好評を得ています。
上野・池之端の本店は、組紐の世界へ足を踏み入れる入り口と言えます。本物の色と技に出会う時間は、旅の鮮やかな記憶として刻まれることでしょう。
有職組紐 道明
電話:03-3831-3773
住所:東京都台東区上野2-11-1
アクセス:JR上野駅から徒歩7分/東京メトロ千代田線 湯島駅から徒歩3分
HP:https://kdomyo.com/
SNS:https://www.instagram.com/domyo_kumihimo/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。