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2026.09.10
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博物館や美術館が集まる文化の拠点でありながら、人情味あふれる商店街の活気も残る街、上野。下町の伝統が息づく上野恩賜(おんし)公園内に、「台東区立したまちミュージアム」はあります。
1980(昭和55)年に「下町風俗資料館」として開館した同館は、関東大震災や東京大空襲、高度経済成長を経て街の姿が変わりゆく中、台東区を中心とする下町地域の文化や伝統を後世に伝えることを目的として設立されました。
開館から40年以上が経過し、施設の老朽化等に伴う大規模な改修を経て、2025年に現在の名称でリニューアルオープン。かつての人々の息遣いを伝える記憶の保存庫として、地域に根ざした役割を担い続けています。

実寸大で再現された「五十嵐提灯店」(画像提供:したまちミュージアム)
1階展示室には、高度経済成長期へと向かう昭和30年代の生活空間を克明に再現した、実寸大の街並みが広がっています。
実在する「五十嵐提灯店」の店主の証言を基に作られたという長屋は、当時の間取りを忠実に反映した造りです。室内に置かれた家具やラジオなどの調度品からは、当時の人々の暮らしぶりがうかがえます。
展示の特徴は、新旧の道具が混在している点。例えば、台所にはガス台がある一方で、勝手口には七輪(しちりん)が置かれています。
「すべてが新しい生活になったわけではなく、そこここに古い時代のものが残っていた。その過渡期のリアルにこだわりました。」と語る、研究員の近藤剛司(こんどう ごうじ)さん。急速な近代化が進む中で、古い道具と新しい生活様式が共存していた当時の日常が、ここに記録されています。

再現された昭和30年代の台所。新旧の生活道具が混在している様子がうかがえる

展示対象を明治から昭和30年代に絞り込み、庶民の暮らしの変遷を伝える2階常設展示室
2階の常設展示室では、下町の歴史を明治から昭和30年代の時期に絞って紹介しています。縄文時代から網羅的に歴史をたどる一般的な郷土資料館とは異なり、台東区を中心とした下町地域の歴史に焦点をあてた展示構成となっている点がこの施設の特徴です。

職人の手道具から生活道具まで、さまざまな道具類が展示されている
あえて焦点を絞り込むことで、震災や戦禍といった度重なる困難を乗り越えた庶民の暮らしがどのように変容していったのか、激動の時代における生活の変遷がより克明に浮かび上がります。

3階から一望できる「不忍(しのばずの)池」。季節ごとに異なる景観を見せる(写真は夏季の様子)
さらに、3階の企画展示室では4か月に1回のペースで展示を入れ替え、期間ごとに特定のテーマを深く掘り下げています。窓からは不忍池の景色を一望でき、地域の歴史に触れながら静かに過ごせる空間となっています。

1階展示室に置かれた生活道具。実際に手に触れることで「物を大切にする心」を伝えている
1階の展示エリアにある茶碗などの生活道具は、その多くを実際に手に取ることができます。貴重な展示品に直接触れられるのは、開館当初からの方針に基づいているのだそう。
この取り組みの背景には、「雑に扱えば壊れてしまう」という事実を来館者に体感してもらう狙いがあります。昔の道具は丁寧に扱わなければ容易に破損します。館側はあえて破損のリスクを受け入れることで、子どもをはじめとする現代の人々に、物を大切に扱う心を伝えているのです。
さらに、実物に触れる体験は「昔はこうやって使っていたんだよ。」といった祖父母から孫への対話を生み出し、当時の生活の記憶や知識を共有する役割も果たしています。

館のコンセプトや下町の魅力について教えてくれた研究員の近藤さん
「『下町』にスポットを当てた、尖ったコンセプトの博物館です。ぜひ足をお運びいただき、ここを通じて上野をはじめ台東区の魅力を知っていただけたら嬉しいですね。」と、研究員の近藤さん。
上野散策の途中にふらりと立ち寄る来館者も多いそうですが、帰り際に「意外と面白かった。」と感想を口にする人も少なくないといいます。その背景には、一般的な観光地である上野のイメージとは異なり、地域の歴史や生活の変遷に触れ、なつかしさを覚える来館者が多いことが挙げられます。
下町文化の変容というテーマを掘り下げる「したまちミュージアム」は、失われゆく昭和の日常を今に伝え、訪れる人を地域の奥深い歴史へといざないます。
台東区立したまちミュージアム
電話:03-5846-8426
住所:東京都台東区上野公園2-1
アクセス:JR上野駅から徒歩5分
HP:https://www.taitogeibun.net/shitamachi/
SNS:https://www.instagram.com/sitamatihuuzoku
https://x.com/shitamachi_ueno
https://www.facebook.com/shitamachi.ueno/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。