2024.06.15
岐阜県郡上市は自然豊かな場所です。長良川沿いに位置し、岐阜県内で高山市に次いで2番目に森林面積が広く、林業が盛んです。市内には林業を学問として教える、岐阜県立森林文化アカデミーもあります。そんな自然豊かな郡上で、木工作家として活動しつつ、キノコや鹿などを採取する “天然食材ハンター” としても活躍するTabi Factory水上淳平さんと郡上の林へキノコ狩りに出掛けました。
水上さんは、郡上の食材を地元レストランで味わえるよう、天然食材ハンターとして収穫の傍ら、一般の方がキノコ狩りを楽しめるよう、ガイドもしています。
キノコは1.5〜2億年前には地球上にいたとされ、約20万年前に誕生した人類は現在とほぼ同じ種類のキノコを見ていたといわれています。キノコの種類は国内だけで約5000種類あり、その中でも食べられるキノコは約100種類。その中でも美味しいものは50〜60種類です。それ以外は食べられない毒キノコが約150種類。残り4000種類以上は食べることができるかも、よくわかっていないキノコで構成されています。
「キノコを見つけたら、まずは周りの観察からです。キノコはどんな樹種の根本に生えているのかで絞ることができます。例えば、晩秋に郡上の林で取れる美味しいキノコ“クリタケ”は名前の通り、栗(クリ)の木の下にしばしば発生し、傘も栗色なことから、そう名付けられました。高級食材で誰もが知る“マツタケ”も松(マツ)の根本に発生するので“マツタケ”です。」“クリタケ”“マツタケ”と固有名詞として認識している人にとっては、生えている樹種名が名前の頭に付いている事実は驚きかもしれません。
日本人は世界的にもキノコ好き民族といわれ、縄文土器でキノコ形土製品も多数発見されています。万葉集にはマツタケを詠った短歌まで編纂されています。1日のキノコ摂取量はシイタケ1個分に相当する約17gと言われ、国民的な食材です。(令和元年国民健康・栄養調査より)
そんな身近なキノコはスーパーマーケットに行けば、同じように揃った形が並べられていますが、天然キノコは個々で形もサイズも育った環境で全く異なります。また、1つのブナに生える仲間として、 1本ずつ独立して生える“シイタケ”と群生して生える“ヒラタケ”が隣に並んで生えることもあります。もうさらに隣にはシイタケと形がそっくりな“ツキヨタケ”も。ツキヨタケは食べると中毒を引き起こす毒キノコ。シイタケと見分ける方法の1つとして、割った時に黒いシミがあることです。
林の中で見るありのままの姿は、自然な形や仲間など、さまざまな関係性を教えてくれます。
大正・昭和になると、日本では多くのキノコが安定的に栽培されるようになりました。身近になったが故に、天然のキノコを自分で採って食べたいと思う人が増えるのは当然の流れ。その際、注意が必要なのは毒キノコを誤って口にしないこと。それを判断するには知識が必要です。そこで、水上さんはキノコ狩りを誰でも安全に楽しめる体験の場を郡上に作ろうとしています。「人は木を直接食べることはできないけれど、キノコを通して木を味わっています。キノコを食べることは、木やその木が生えている郡上の土壌を味わうことになります。生えている場所が変われば、味も変わってくるのがキノコの良いところです。ここでしか味わえない味を知ってほしい。」水上さんはそう教えてくれました。
水上さんは夢の実現のため、安定的にキノコが採れる環境を準備しています。郡上の林で、自然に倒木した木に菌を打ち、林で自然と共に育てる。「体験に来た人に天然キノコの姿や形、生えている状態を知ってほしいけれど、やっぱり採れないとガッカリさせてしまう。何より、自分でキノコを採ることと採ったキノコを味わうこと、これをセットで郡上の味に触れてほしい。」と笑顔で話す水上さん。郡上で育ったキノコをいつでも安全に採ることができれば、たくさんあるキノコの種類や味の違い、危険性を学ぶことがもっと身近になります。
最後に、水上さんから名刺を手渡されました。「私もはじめはキノコのことが分からなくて、先生に聞きながら食べられるキノコの判断をしてきました。今度は私が伝える番です。キノコで分からないことがあったら、連絡をください。」と優しく微笑みました。
ここは日常生活ではお目にかかれないキノコをはじめ、郡上の土地を味わう場。天然キノコのダイナミックな姿、まだ食べたことのない美味しいキノコに出会えました。
Tabi Factory (タビファクトリー) 水上 淳平(Mizukami Junpei)
住所:〒501-5303 岐阜県郡上市高鷲町大鷲2223-2
アクセス:高速「高鷲IC」 車19分
SNS:https://www.instagram.com/tabi.factory/
※営業時間や定休日についての詳細は上記のリンク先にてご確認ください。