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2026.06.15

大垣市の夏の風物詩「水まんじゅう」。水の都ならではの、透き通った味わい

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大垣市の夏の風物詩「水まんじゅう」。水の都ならではの、透き通った味わい

岐阜県大垣市は、「水の都」と呼ばれる町です。城下町が発展した頃には水路が張り巡らされ、今でも市内のいたるところで豊富な地下水が湧き出る様子が見られます。

その恵みが生んだお菓子が、「水まんじゅう」です。現代のような冷蔵設備が普及していなかった明治時代の夏場に「冷たい湧き水で冷やして食べるお菓子」として誕生しました。その「水まんじゅう」を昔ながらの原材料と手法で作り続けているのが、1798(寛政10)年創業の「金蝶園(きんちょうえん)総本家」です。

水の都が生んだ和菓子

松尾芭蕉の『奥の細道』結びの地としても知られる船町港があるように、大垣はかつて水運で栄えた町です。江戸時代末期から明治にかけて、井戸を掘る技術が民間にも広まると、各地に地下水を貯める「井戸舟(いどぶね)」が作られました。

年間を通じて14度ほどに保たれる地下水は、天然の冷蔵庫としても活用され、生活と切り離せないものとなっていきます。

大垣駅前の「井戸舟」。2段になっているのは、上下で用途を使い分けるため

大垣駅前の「井戸舟」。2段になっているのは、上下で用途を使い分けるため

その頃、「夏でもおいしいお菓子を提供したい」と、ある和菓子屋が考案したのが地下水で冷やして食べる「水まんじゅう」。やがて地域に広まり、八百屋の「井戸舟」で野菜とともに冷やされて売られるほど、親しみのあるものとなりました。「水まんじゅう」は、「水の都」の文化が形になったお菓子なのです。

「金蝶園総本家」の店先では、今でも地下水で冷やされた「水まんじゅう」が見られます。大垣の夏の風物詩を味わうべく、遠方からも人々が訪れています。

水圧を利用しておちょこから水まんじゅうを出し、お客様に提供している

水圧を利用しておちょこから水まんじゅうを出し、お客様に提供している

葛とわらびで作る、本物の水まんじゅう

抹茶あん(手前)とこしあん(奥)。抹茶あんは8代目が開発した

抹茶あん(手前)とこしあん(奥)。抹茶あんは8代目が開発した

全国で作られている多くの「水まんじゅう」とは異なり、「金蝶園総本家」では今も葛粉とわらび粉を使う伝統製法を守り続けています。

葛粉やわらび粉の生産量は年々減っており、入手は簡単ではありません。それでも8代目店主・北野英樹(きたの ひでき)さんが伝統製法にこだわるのは、「出来たての透明感と食感、そして風味をぜひ味わってほしい。」という思いがあるからです。

葛粉やわらび粉を使った「水まんじゅう」は傷みやすく、販売できるのは作った当日のみ。そのため、インターネットでの販売は一切行っていません。北野さんは「大垣に来てもらうことが地域貢献だと思っています。」と話し、この地に足を運んだ人だけが味わえる体験にこだわり続けています。

雑味のないあんこは、豊富な地下水があるからこそ

「金蝶園饅頭」。ほんのり酒の香りがする皮は、あんこが透けるほど薄い

「金蝶園饅頭」。ほんのり酒の香りがする皮は、あんこが透けるほど薄い

「水まんじゅう」の味の決め手は、あんこにもあります。「金蝶園総本家」では、小豆を炊く際に大量の湧き水で3〜4回さらして雑味の成分を丁寧に取り除き、炊き上げた後も大量の冷水で急冷します。まさに豊富な地下水がなければ成り立たない製法です。「おいしい地下水を豊富に使えることが、大垣でお菓子を作る最大のメリットです。」と北野さんは言います。

「水まんじゅう」と並ぶ「金蝶園総本家」のもう一つの名物が、「金蝶園饅頭」です。現在の饅頭の原型ともいわれる酒元(さかもと)饅頭で、酵母による自然発酵のみで仕上げる皮は薄く、あんこの比率が高いのが特徴。だからこそ、口どけのよいあっさりとしたあんこが欠かせないのです。

本物を残すことが、自分たちの使命

8代目店主の北野英樹さん

8代目店主の北野英樹さん

手間ひまかけて昔ながらの製法を守り続けているのは、おいしいものを届けたいという思いだけではありません。

北野さんは「地域の食文化を残すことが使命だと思っています。」と語ります。

総ケヤキ造りの重厚な店舗は、「大垣市景観遺産」としても認定されている

総ケヤキ造りの重厚な店舗は、「大垣市景観遺産」としても認定されている

創業から200年以上。戦災で店が全焼した後も、1951(昭和26)年に宮大工の手による総ケヤキ造りで再建されたこの店舗は、脈々と受け継がれてきた歴史をそのたたずまいに宿しています。

水の都・大垣の文化を後世に伝えるためにも、「金蝶園総本家」はこれからも変わらぬ味を守り続けていきます。


金蝶園総本家 大垣駅前本店

電話:0584-78-3300 
住所:岐阜県大垣市高屋町1丁目-17 
アクセス: JR「大垣駅」南口より徒歩2分 
HP: https://kinchouen.co.jp/ 
SNS: https://www.instagram.com/kinchouen_souhonke/ 
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。