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2024.08.14

創業107年の ”支那料理” 「丸デブ総本店」が守るもの

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創業107年の ”支那料理” 「丸デブ総本店」が守るもの

ホテルリソル岐阜から北に向かって徒歩10分あまり、金華橋通りの西側にお店を構える「丸デブ総本店」。11時の開店前から行列ができる創業107年目の老舗 支那そば店です。

現店主は3代目の神谷房昭さん、祖父の房治さんが東京の「来々軒」で修行後、岐阜に戻って西柳ケ瀬の歓楽街で引き売り(屋台を引いて売る方法)を始めたのが1917(大正6)年のこと、やがて岐阜の中心を南北に走る平和通り(現:金華橋通り)の東側の、当時は岐阜で一番の繁華街柳ケ瀬の地にお店を構えました。

太平洋戦争末期の1944(昭和19)年には兵隊さんの凱旋道路になるため当時の平和通りが拡張されることでお店はやむなく立ち退きとなり、通りの反対側の現在の地に移りました。1945(昭和20)年の岐阜空襲で焼失したあとは、戦後のどさくさで土地が取られないように、”掘っ立て小屋” を建て、3~4人で居座ってこの地を守り抜きました。それから3年後にようやく建て直して現在のお店を再開しました。

平和道り(現:金華橋通り)の向かい側に移転した当時の店舗。 看板には右書きで「支那料理」とある

平和道り(現:金華橋通り)の向かい側に移転した当時の店舗。 看板には右書きで「支那料理」とある

「東京の『来々軒』はそもそも支那そばのお店だったんです。ですのでウチはもともと支那料理として始まったんです。
メニューは『中華そば』と『わんたん』だけ・・・ 私が子供のころからなぜか2品だけでした。お店は中(厨房)2人外2人の4人だけでやっているので2品しかできないんです。」と語るのは3代目店主の神谷房昭さん。

メニューは創業以来この2品のみ

メニューは創業以来この2品のみ

麺もわんたんも自前で作ります。出来合いの材料を一切仕入れず、具材の全てを自前で作り、持ち家で少人数で経営することで今どき「中華そば」も「わんたん」も一杯600円というお値打ち価格を守っています。

スープが溢れんばかりの「中華そば」(左)と「わんたん」(右)

スープが溢れんばかりの「中華そば」(左)と「わんたん」(右)

岐阜の街の変化を見続けて・・・

ここまでそれなりに浮き沈みの激しい年月を過ごしてきました。暑い年、寒い年、商店街の環境変化、そしてコロナ禍・・・。
昔、柳ケ瀬が今より栄えていた頃は映画会社の数だけ映画館があり、1本映画が終わる度にひと込みしてたいそう繁盛しました。映画館が郊外に出て行き、百貨店が無くなって行き、本通りが寂れて人通りも少なくなって行きました。

「うちは何とか息子と二人でやっていますが、この辺りのお店は私たちの世代くらいから代替わりができなくなっているんです。同世代のとんかつの『一平ちゃん』、うどんの『武蔵野』さん、洋食の『ねこ一』さんもここ1~2年で閉店してしまいました。商売屋は時間が長いし不規則だし、休みが少ないので嫁ぎ先としても敬遠されてしまうんですね。」と少し寂しそうに笑う神谷さん。

こだわりは ”うちの味” に責任をもつこと

コロナ禍の時はお店を閉じれば補助金が出たが、あえて補助金はもらわずお店を開け続けました。
「店を閉めていると麺を練り込む感覚が鈍るんです。指には網を上げる時のタコができていて、休んでいるとその指タコが柔らかくなってしまい網があげられなくなってしまうんです。ガス代や電気代のことを考えると1日20~30人のお客さんでは赤字ですが、暫く休んでいざ店を開けて感覚が戻らず気に入らないものが出来てしまう方が困るんです。」と神谷さん。

多店舗化の予定はありますか?との問いについては「ないです。」ときっぱり。
「チェーン店化したいという会社の方がいらっして『何店舗か出しませんか?』と言われるんですが、『バイトにはできませんがいいですか?』と言うとそのまま帰られます。うちには常連のお客さんに合わせて足し引きする独自の味があるので。」

更に、「あちこちに出すと味に責任が持てない。『あそこの店お前のところと違う』と言われるのが一番困るんです。」

創業以来様々な困難を乗り越えて100年あまり、3代目店主神谷さんの並々ならぬ”うちの味”へのこだわりがありました。

スマートフォンやSNSの普及に伴い個人が情報を発信できるようになってからは常連さん以外にも新しい客層が増えてきたとのこと、今まで全然知らなかった方や女性のお客さんも増えてきたそうです。

ところで店名の「丸デブ」の由来を伺うと、単に初代店主が太っていて ”デブデブ” と呼ばれていたからだそうです。
お店に写真があります。たしかに写真の右下に映っている初代店主はたいそう恰幅の良い方のようでした。

写真右下の葉巻をくわえているのが初代店主神谷房治さん

写真右下の葉巻をくわえているのが初代店主神谷房治さん

2024年7月、大通りを挟んでお店の向かいにある市内最後の百貨店「岐阜タカシマヤ」が閉店しました。
それでも「丸デブ総本店」の店内は大声で注文を受ける店主の声で活気に溢れています。


丸デブ総本店

住所:岐阜市日の出町3-1

電話:058-262-9573

アクセス:JR岐阜駅北口から徒歩16分

     岐阜バス「金華橋通り柳ケ瀬」徒歩1分