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2026.08.15

岐阜県大垣市は、枡の生産量で全国の約8割を占める一大産地です。豊かな地下水に恵まれたこの街は「水の都」とも呼ばれ、ヒノキの産地である東濃(とうのう)にも近く、かつては川を使って良質な木材を運び込むことができました。
こうした土地の恵みを背景に枡づくりが根づき、一時は市内に9社ほどの工房が軒を連ねたといいます。現在も枡を作り続けるのは3社。その一社が、1950(昭和25)年創業の有限会社大橋量器です。

枡は、1,300年ほど前から使われてきた道具です。作物を量る計量の器として、また神社へお供えものを納める器として重宝され、暮らしと祈りの両方を支えてきました。やがて縁起物として親しまれるようになり、お祝いの席や、日本酒を飲む際に目にすることが多くなっていきます。
一方で、近年は結婚式で枡を用いる場面や、日本酒を口にする機会が年々減り、暮らしの中でその姿を見ることは少なくなりました。
昔と同じものを作り続けるだけでは、伝統を残せない。危機を感じた大橋量器は、今の暮らしに合う商品を生み出し、実店舗「枡工房ますや」を通して、その魅力を発信することにしたのです。

工房に隣接する実店舗「枡工房ますや」

枡の可能性を広げるため、代表の大橋博行(おおはし ひろゆき)さんは、商品開発に力を注いできました。計量の器や酒器という枠を越え、今の暮らしに寄り添う商品を次々と形にしています。お客様から寄せられた「こういう形は作れますか。」という一風変わった依頼にも、柔軟に応じます。
一方で、枡のよさを残すために守り続けていることもあると、営業部の大口颯斗(おおぐち はやと)さんはいいます。一つは、国産のヒノキを使うこと。もう一つは、枡ならではの「組み目」を生かすことです。
側面を貼り合わせるのではなく、溝を組み合わせてつくる枡には、職人の技が欠かせません。10ある工程それぞれに職人がいるからこそ、組み目がぴたりと合わさり、水を入れても漏れない美しい枡が生まれます。

桝の表面を整える「削り」。組み目のわずかな凸凹を、均一になるよう仕上げる

手前から時計回りに「COBITSU(こびつ)」、「ロックマス」 「Math Salt(マスソルト)」
大きな反響を呼んだのが「COBITSU(こびつ)」です。炊きたてのご飯を入れて蓋を閉め、そのまま冷凍庫へ。食べるときに電子レンジで温めれば、木がほどよく水分を調え、炊きたてのような口当たりがよみがえります。ヒノキがふんわりと香り、まるでおひつで味わうような趣があります。一時期は半年待ちとなるほどの人気を集めました。
また、湯船で楽しむ「Math Salt(マスソルト)」も人気です。枡ごとお湯に入れると、塩が溶けて底に隠れたメッセージが現れ、贈り物として選ばれています。
営業部のアイデアから生まれた「ロックマス」は、口元が広く氷が入れやすいコップ状の枡。木ゆえに見た目より軽く、手に取った人を驚かせます。どの商品にも、ヒノキの温もりと組み目の美しさが息づいています。

体験教室では1合枡を組み上げる。機械を使った「削り・面取り」も体験可能
枡のおもしろさは、やはり触れてこそ伝わるもの。工房では、枡づくり体験も行われています。
組み目に糊を塗って枠を組み、底板を付け、側面を削ります。仕上げに大垣城の焼印を入れれば、一合枡の完成です。所要時間はおよそ1時間。近隣の親子連れのみならず、遠方からの旅行者も工房を訪れ、枡づくりを楽しんでいます。

大垣城の焼印
入社するまで枡についてほとんど知らなかったという大口さんは、「木の温もりや木目の美しさは、実際に手に取ってはじめて伝わるものです。一つとして同じ表情のない枡を、より多くの人に知ってもらいたいです。」と話します。

営業部の大口颯斗さん。旗は「商い(秋がない)ますます(升が二つ)繁盛(半升)」を表している
1,300年の道具を今の暮らしへ。大橋量器は「枡工房ますや」を通して、枡の新しい可能性を伝え続けています。
枡工房ますや
電話:0584-78-8333
住所:岐阜県大垣市西外側町2丁目8
アクセス:JR大垣駅から車で5分
HP:https://www.masuza.co.jp/
SNS:https://www.instagram.com/masuya.ohashiryoki/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンクからご確認ください。