2024.06.09
程よい腰の蕎麦に甘いたれがしみ込んだ油揚げとサクサクの天かすが見事にマッチした名物「冷やしたぬき」。お客さんのおよそ8割が注文をする「更科」の定番メニューは実はお客さんのリクエストに応える形で出来上がりました。「最初は天かすだけが入っていたお蕎麦にお客さんがお揚げを入れて欲しいとのことで油揚げを加え、天かすとお揚げが一緒になったたぬき蕎麦が出来上がったんです。」と3代目店主の長女、水野亜沙子さん。
今年で96年目を迎える老舗蕎麦店「更科」はもともとは岐阜随一の繁華街、柳ケ瀬商店街に昭和3年に初代店主・水野鎌次郎さんが店を構えました。最初は志那蕎麦から始まってその後天ぷら蕎麦が加わり、安くておいしい蕎麦屋さんとして人気店になりました。しかし1945年の岐阜空襲で柳ケ瀬をはじめ中心部がほぼ焼け野原となり「更科」も燃えてなくなってしまいます。
その後市役所近くの京町で店を再開し、2代目店主が大阪など各地で修行する間に冷たく甘辛い出汁を学び、お客様からの要望を取り入れる形で冷やしたぬきが出来上がったのです。今では当たり前になったお客様の要望に応じた「トッピング」の走りと言えます。因みに、基本の冷やしたぬきにはお揚げが4枚入っており、要望に従って何枚でも追加が可能です。特に伝票などは無くお会計の時に追加の揚げの枚数を自己申告します。
こだわりのひとつは店の井戸から汲み上げる井戸水。麺を湯でる、冷ますのにはもちろん、お店オリジナルの甘辛いつゆにも岐阜の水が使われています。
もうひとつのこだわりは徹底した「手作り」とのこと。
「麺は店の2階で粉の状態から打つ自家製麺で、出汁は調味料を一切使わず削り節を削って一番出汁をとり、天かすは天ぷらのかすではなく冷やしたぬき専用に天かすを作っているんです。」と、長男の水野悟さん。
お店の2階は小ぶりながらも製麺所になっており、そば粉を井戸水で練りながらプレス機で踏み、2本のローラーで伸ばして打ち粉を垂らし、最後に麺状にカットして仕上げという一連の工程を昔と変わらず ”家内工業” で行っています。
お店を切り盛りするのは3代目店主水野信さんの愛娘の亜沙子さん。多くのお店が跡継ぎが無く代替わりに苦しむ中、弟の悟さんと2人で次の時代を担う準備を整えています。
更科
電話:058-265-9594
住所:岐阜県岐阜市京町3-4
アクセス:岐阜バス「市民会館・裁判所前」 から徒歩1分