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2026.03.20

京都の食文化を語る上で欠かせない「西京味噌」は、塩味を抑えたまったりとした甘みと麹由来の芳醇な香りが特徴です。
この味わいを約200年にわたり守り続けているのが、京都御所の西側に本店を構える「本田味噌本店」。1830(天保元)年の創業以来、この地で実直に味噌造りと向き合ってきました。
暖簾をくぐると、ずらりと並ぶ味噌樽とともに、フィナンシェやラスクといった意外な洋菓子たちが並びます。そこには、伝統を守り抜くだけでなく、現代の暮らしに寄り添う新しい美味しさを探求し続ける老舗の姿がありました。

味噌を届けるために使われていた、御所への入門証や納品元帳
「本田味噌本店」の白味噌は、江戸時代に初代・丹波屋茂助(たんばや もすけ)氏が禁裏御所御用達(きんりごしょごようたし)として宮中に献上したのが始まりと云われています。
やがて都が江戸へ遷ると、京都は西の都「西京」と呼ばれるように。それとともに、この地で愛され続けた白味噌もまた「西京味噌」の名で全国に広まっていきました。
そんな「西京味噌」を象徴するのが、ほかにはないふくよかな甘みです。一般的な味噌が大豆と米麹を同量の割合で作るのに対し、「西京味噌」は大豆の約2倍もの米麹を使用します。さらに塩分を半分ほどに抑えることで、麹本来の甘みが際立つまろやかな味わいに仕上げているのです。

「本田味噌本店」営業部長の田中さん
「当時はお米が年貢として納められる貴重品でしたから、米麹をふんだんに使う白味噌は大変な贅沢品だったはずです。」と話すのは、「本田味噌本店」の営業部長を務める田中 淳子(たなか じゅんこ)さん。
「宮中にお住まいの方々は、激しい肉体労働をされたわけでもないでしょうから、塩分よりも甘みが好まれたのかもしれませんね」。田中さんは、当時の暮らしに思いを馳せながら、そう推察します。
保存食としてではなく、食事を楽しむための「嗜好品」としての味噌。「西京味噌」が持つ上品な甘さは、優雅な時間が流れる宮中の食卓の中だからこそ育まれたものなのかもしれません。

「本田味噌本店」の工場では、衛生管理の行き届いた安全で安心な味噌作りが行われています。しかし、どんなに技術が進歩しても、最終的に味の良し悪しを判断するのは「人間の舌」だといいます。
「同じ材料、同じ製法でも、その時々で味は微妙に変化します。」と話す田中さん。
出来上がった味噌は10名ほどの職人たちが実際に口にし、味や香り、色やキメの細かさなどを厳しくチェック。「これなら本田の味として恥ずかしくない。」と太鼓判を押されたものだけが、商品として店に並ぶのです。

「一わんみそ汁」(「とうふ」「油揚げ」「なめこ」「西京白みそ」の全4種類)
そうして守り抜かれた伝統の味を、現代の食卓で手軽に楽しんでほしい—。そんな想いから生まれたのが「一わんみそ汁」です。焼き麩の中にフリーズドライの味噌と具材を包んだこの商品は、お椀に入れてお湯を注ぐだけで本格的なお味噌汁が出来上がります。
ほかにも、塩キャラメルのような味わいの「西京白味噌ミルクジャム」や、洋風だしと味噌の旨味を合わせた「西京白味噌スープ」、サラダやパスタにふりかける「味噌フレーク」など、いつもの食卓に少しの驚きと彩りを添えるユニークな商品が揃います。

パンやアイスと相性抜群の「西京白みそミルクジャム」
「食の欧米化が進み、味噌の需要は年々減ってきています。だからこそ、手軽に手に取れる形で提案することで『お味噌もいいな』と再発見していただければと思うのです」。
そう語る田中さんの言葉には、味噌屋としての静かな情熱が滲みます。

「味噌香 京(みやこ)フィナンシェ」
そんな想いと、味噌の新たな可能性を形にしたのが、洋菓子ブランド「Le martin de miso(ル マルタン ドゥ ミソ)」です。
味噌と乳製品の相性のよさに着目し、「味噌が活きている美味しさ」を目指して何度も試作を重ねたとのこと。味噌の風味を足したり引いたり微調整を繰り返す日々。そうした試行錯誤の末に、バターやクリームと味噌が互いのよさを高め合う黄金比に辿り着きました。
中でも人気の商品は「味噌香 京フィナンシェ」。バターたっぷりの生地に「西京白味噌」と爽やかな香りの「柚味噌」が練り込まれています。一口食べれば、しっとりとした食感とともに、バターの芳醇なコクと味噌の優しい甘じょっぱさが重なり合います。

「味噌香 京ラスク」
また、軽やかな食感が楽しい「味噌香 京ラスク」もこだわりが詰まった一品。フランスパンに「西京白味噌」と砂糖を合わせたマーガリンを塗り、サクサクに焼き上げています。シンプルだからこその素朴な味わいと、ふわりと漂う香ばしさが魅力です。

「味噌屋である」という軸は決してぶらさず、軽やかに変化を受け入れていく姿勢が「本田味噌本店」にはあります。
「伝統は大事ですが、変わらなければそこで終わってしまいます。時代に合わせて変化したものが、また次の伝統になっていくのだと思います。」
田中さんのその言葉は、「本田味噌本店」が歩んできた、そしてこれからも歩んでいく道そのものを象徴しているようです。
200年前から愛され続ける伝統の味と、思わず誰かに教えたくなる新しい美味しさ。その両方を持ち帰ることも、京都という街を深く味わう旅の醍醐味なのかもしれません。
本田味噌本店
電話:075-441-1122
住所:京都府京都市上京区室町通一条上ル小島町558
アクセス:地下鉄烏丸線「今出川駅」6番出口より徒歩6分
HP:https://www.honda-miso.co.jp/
SNS:https://www.instagram.com/hondamiso1830/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。