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2025.09.20

奈良時代に唐から伝わり、平安の貴族たちが和歌や文を綴る際に用いた優美な装飾紙「京からかみ」。「版木(はんぎ)」を用い、和紙に一枚ずつ文様を施すその繊細な技は、千年の時を超えて今なお京都に息づいています。
この伝統を受け継ぐのが、1902(明治35)年に掛け軸や屏風を手掛ける表具師として創業した「株式会社丸二(まるに)」。現在は襖紙(ふすまがみ)や壁紙など、和の内装材料を扱いながら、自社工房で技を守り続けています。
「丸二」が体験工房兼ショップとしてかまえる「唐丸(からまる)」では、「京からかみ」の歴史や美意識に触れ、実際に“自分だけの一枚”を摺(す)ることができるそう。一枚の和紙にうつした文様が静かに浮かび上がるその一瞬を楽しみ、旅の思い出として持ち帰ることができます。

「京からかみ」の魅力と可能性を伝える「株式会社丸二」代表の西村さん
「江戸時代には襖紙のことを『からかみ』と呼び、庶民の暮らしに欠かせない消耗品でした。」そう語るのは、「丸二」の四代目、西村和紀(にしむら かずのり)さんです。
しかし、明治以降の印刷技術の流入により、からかみ屋は次々と廃業。手仕事の伝統は存続の危機を迎えました。そんな中、廃業する店の版木は、伝統を守り続ける他のからかみ屋へと託されていき、現在でもそのいくつかが「丸二」で大切に使われています。

江戸時代から受け継がれてきた現役の版木の裏書き
江戸時代から180年以上使われているものもあるという版木。裏面には、彫られた年代や版元の屋号、文様名などが記された「裏書き」があり、それぞれの版木が辿ってきた歴史を感じることができます。
そして、その長い年月を経た版木が生み出す「京からかみ」の豊かな表情も魅力の一つです。「長年使い込まれた版木は文様の角が丸くなり、摺ると独特の柔らかさが生まれるんです。」と、西村さん。印刷では表現できない温かな風合いこそ、守り継がれてきた手仕事の真髄と言えるのではないでしょうか。

西村さんの祖父が残した「京からかみ」のパネル
もともとは家業を継ぐつもりがなかったという西村さん。転機となったのは、祖父が遺した一枚のパネルとの出会いでした。ちぎり絵のように「京からかみ」が貼り合わされたその作品に、「古いのに、めちゃくちゃ粋やん。」と心を奪われ、現代にも通じる無限の可能性を感じたといいます。

特殊な和紙に文様を摺ったペンダントライト「KARA-IRO(からいろ)」
その想いは今、伝統と革新を両輪とする「丸二」の挑戦に繋がっています。和室の減少という時代の流れの中で、「京からかみ」を壁紙やアートパネルとして提案。さらには、グローバルな空間でも負けない存在感を放つよう、漆と融合させた「漆からかみ」を開発するなど、その歩みは止まることがありません。
「『京からかみ』の魅力は、“料理しやすい”ことだと思います。」
紙だけでなく絹地へ摺ったり、色の調合や文様との組み合わせを工夫したりと、表現は自由自在。ステーショナリーからインテリア、そして建築まで、用途はどこまでも広がっていきます。

「多くの人に『京からかみ』を知ってもらうための入り口にしたい。」そんな想いから誕生したのが、体験工房「唐丸」です。人気の「御朱印帳づくり体験」では、自分で摺った「京からかみ」を世界に一つだけの御朱印帳に仕立てることができます。
使用する和紙は、繊細な文様を美しく写し出すそのきめ細かさから「京からかみ」との相性がよいとされる「越前鳥の子紙(えちぜん とりのこし)」。20色以上の「越前鳥の子紙」から心惹かれる一色を選び、月替わりで用意される3種類の版木から好きな文様をそれぞれ選びます。
たとえば「葡萄唐草(ぶどうからくさ)」には豊穣や子孫繁栄、「小菊(こぎく)」には健康長寿など文様に託された意味や願いがあり、それらに思いを巡らせる時間も体験の醍醐味です。

「葡萄唐草」の版木にふるいで絵の具をのせていく様子
絵の具には、花崗岩(かこうがん)の粉末でキラキラと輝く「雲母(きら)」が使われます。接着剤の役目を果たすのは、布海苔(ふのり)という海藻を煮詰めたもの。すべてが古来より受け継がれてきた自然素材です。
「ふるい」で版木に絵の具をのせ、和紙をそっと重ねたら、優しく円を描くように手のひらで摺ります。これを二度繰り返すことで、独特のふっくらとした量感が生まれるのです。

枠に合わせて御朱印帳の表紙となる部分を切り取る作業
摺り上がった「京からかみ」から表紙にする部分を切り取り、御朱印帳に仕上げていきます。どこを切り取るかによって違う表情を見せる文様に、「京からかみ」の奥深さと手作りの面白さを味わうことができます。
ほかにも、インテリアパネルや照明シェード作り、工房見学など豊富な体験コースが揃う「唐丸」。さまざまな角度から「京からかみ」の世界に触れることができます。

さまざまな文様の「唐紙グリーティングカード」
「唐丸」併設のギフトショップでは、「京からかみ」を使った魅力的な商品を購入することができます。
「唐紙グリーティングカード」は、職人の手で丁寧に摺られた「京からかみ」を二つ折りのカードにしたもの。贈る相手を思い浮かべながら文様を選ぶ時間も楽しく、季節のお便りやプレゼントに添えても喜ばれそうです。
また、版木と同じ「朴(ほお)の木」でできた木製スタンプとインクの「版木スタンプセット」も人気。愛らしいワンポイントサイズで、「小瓢箪(こひょうたん)」や「飛び鶴」など四季の文様が日常でも気軽に楽しめるため、お土産にも最適な一品です。

お土産としても人気な「版木スタンプセット」

今もなお、確かな美しさと可能性を鮮やかに放つ「京からかみ」。その長い物語の一端に触れ、守り受け継がれてきた版木で文様を摺る体験は、まるで時間を旅するようなひとときです。
自らの手で生み出した一枚は、日常に彩りを与え、旅の感動を蘇らせてくれるでしょう。
京からかみの体験工房とショップ 唐丸
電話:075-361-1324
住所:京都府京都市下京区泉正寺町460
アクセス:地下鉄烏丸線「四条駅」5番出口より徒歩5分
阪急「烏丸駅」15番出口より徒歩8分
HP:https://karamaru.kyoto
SNS:https://www.instagram.com/karamarukyoto
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。