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2026.05.20

京都「書ギャラリー きよら」で心を整える、癒しのかな書体験

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京都「書ギャラリー きよら」で心を整える、癒しのかな書体験

京都御所のほど近く、閑静な街並みに溶け込むように佇む「書ギャラリー きよら」。

ここでは、日本独自の文字であり、平安貴族たちが和歌や物語文学とともに芸術として極めた「かな書」の世界に触れることができます。

慌ただしく過ぎる日常から少しだけ距離を置き、静かに自分自身の心と向き合う—。洗練されたモダンな空間で墨の香りに包まれながら、自らの手で筆を走らせる「かな書」のワークショップ体験は、外の喧騒を忘れさせ、穏やかなひとときをもたらしてくれます。

平安時代から続く空間美。「かな書」という芸術。

日本には元来固有の文字がなく、中国から伝来した漢字を使用していました。やがて、漢字の音を借りて日本語を書き表すようになり、平安時代に入るとその書き方は少しずつ崩れていきます。

中でも、漢字を学ぶ機会の少なかった宮廷の女性たちが和歌や手紙を伸びやかに書いたことが、当時の美意識と結びつき、日本独自の「かな」が生まれます。

そして和歌が優雅さを増すにつれ、かなもまた芸術としての「かな書」へと磨かれていきました。

「かな書の世界は、文字と余白の組み合わせでまったく違う表情になる面白さがあります。」そう語るのは、「書ギャラリー きよら」代表の日比野由佳(ひびの ゆか)さん。

「書ギャラリー きよら」代表の日比野さん

「書ギャラリー きよら」代表の日比野さん

「たとえば、現在使われている『は』というひらがなは『波』という漢字が崩れたものですが、昔は『者』や『八』などを崩した多様な文字が使われていました。同じ音でも使う文字が違えば、作品全体の余白や全体のバランスが大きく変わるんです。」

調和の取れた配置を探りながら、流れるような線で書いていく作業が、「かな書」独特の空間美を作り上げるのだそう。

「『かな書は読めないから難しい』と思われがちですが、作品全体の雰囲気など、まずは全体を一枚の絵のように楽しんでいただければと思います。」と日比野さんは微笑みます。

格式高い書の世界を開く、4代目の想い

日比野さんは、「昭和の三筆」と称された初代・日比野五鳳(ごほう)氏から直系で続く書家一族の4代目。一般の人々に開かれた場を作ったのは、父である日比野博鳳(はくほう)氏からの提案がきっかけでした。

博鳳氏が現在のギャラリーと出会った際、「御所の目の前という立地を活かして、海外の方や一般の方にも気軽に体験してもらえる場を作ろう。」と考えたそう。

日常生活で筆を持つ機会が減っている現代において、いかにして「かな書」に興味を持ってもらうか。日比野さんは、気軽に入りやすいギャラリー空間を整え、旅の記念に作品を持ち帰ることができる「かな書ワークショップ」を考案。試行錯誤を重ねてきた背景には、ある強い想いがありました。

ワークショップやイベントで制作可能な作品例

ワークショップやイベントで制作可能な作品例

「ひと昔前までは『かな書』を嗜む人がたくさんいましたが、今はその数が少しずつ減ってきています。誰かが伝えていかないと、文化は途絶えてしまいます。」

だからこそ、「かな書」の持つ美しさを一人でも多くの人に知ってほしいと日比野さんは言葉に力を込めます。

「一度体験していただくことで、かな書を少しでも身近に感じてもらえたら嬉しいです。」

墨の香りに包まれる、心が整う時間

ワークショップは、静かに墨を磨(す)るところから始まります。硯(すずり)に少量の水を落とし、ゆっくりと円を描くように手を動かすと、次第に墨の香りが空間に漂い始めます。

墨の準備が整うと、細筆の基本的な持ち方を教わり、線を引く練習に入ります。

細筆で線を引く練習時に使用する見本

細筆で線を引く練習時に使用する見本

学校で習うような「とめ・はね・はらい」を意識する習字とは違い、繊細で細い線ながら、その中に強弱があるのが「かな書」の特徴。

「細く入って、真ん中が太くなり、また細く抜けていく。遠くから飛行機が着陸して、また飛び立っていくようなイメージです。」という日比野さんの柔らかな表現が、和紙の上を滑る筆先を導きます。

ただ筆先の動きだけに意識を傾けていると、いつの間にか心が無になっていくような不思議な静寂に包まれます。

さまざまな題材の中から、清書する文字を選択

さまざまな題材の中から、清書する文字を選択

筆使いの感覚を掴んだら、いよいよ作品づくりへ。「さくら」「あじさい」などの季節を彩る言葉や、「きょうと」「おこしやす」といった日本らしい言葉など、用意された見本の中から心に響く題材を選びます。

好きな色や柄の千代紙を2枚選び、台紙の扇をコラージュ

好きな色や柄の千代紙を2枚選び、台紙の扇をコラージュ

次に、台紙となる扇の色味や、扇をコラージュする千代紙を選択。無数の組み合わせの中から自分好みの雰囲気を探り当てる時間は、まるでアートを生み出すような高揚感をもたらします。

選んだ題材の言葉を清書

選んだ題材の言葉を清書

呼吸を整え清書を行い、最後に「きよら」の落款(らっかん)が押されて作品は完成。和紙の上に平安から続く美意識と書き手の個性が重なり合います。

「『集中して没頭できる時間が好き』とおっしゃる参加者の方は多いですね。筆を持つことが、自分の心を整える時間になっているのだと思います。」と日比野さんは語ります。

日常に、凛とした彩りを添えて

ギャラリー名である「きよら」とは、濁りのない透明感のある書き手自身の精神の清らかさのこと。書に向かう時に大切にすべきものとして初代・五鳳氏が重んじていた教えに由来するものです。訪れる人にも清らかな心で楽しんでほしい—。そんな日比野さんの願いが、この空間には満ちています。

心を静かに洗い流し無心で筆を走らせた記憶は、書き上げた作品を見るたびに鮮やかに蘇ります。

平安時代から続く「余白の美」を形にした、世界に一つだけのアート作品。その無垢な美しさは、旅から帰った後の日常にも、凛とした彩りを与え続けてくれるはずです。


書ギャラリー きよら
電話:075-791-1005 
住所:京都府京都市上京区烏丸通丸太町上ル春日町425   
アクセス:地下鉄烏丸線「丸太町駅」2番出口より徒歩1分   
HP: https://kiyorajapan.official.ec/
SNS: https://www.instagram.com/gallerykiyora/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先からご確認ください。