2024.09.30
NEIGHBORS
地元の方から観光やビジネスで訪れる方まで、さまざまな人が行き交う札幌市の玄関口「JR札幌駅」。高いビルが立ち並ぶにぎやかな中心部から北に向けて足を進めると、思わず都市であることを忘れてしまうほど豊かな自然にあふれた学び舎が顔をのぞかせます。
「北海道大学」は、その前身である「札幌農学校」初代教頭であるクラーク博士が残した「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」の名言でも広く知られる国立大学の一つ。構内にはつい写真におさめたくなる美しいイチョウ並木やポプラ並木、歴史の重みを感じさせる「北大総合博物館」など、旅の合間に立ち寄りたくなる見どころがたっぷり。
自然が織りなす四季折々の景色を味わいに、また散策やランニングなどを楽しみに訪れる多くの市民や観光客にとって、憩いの場となっています。
そんな「北海道大学」の正門を抜け歩き進めると、右手に見える木々や池に囲まれた落ち着きのあるレンガの建物が目を惹きます。
2017年にオープンした「北大マルシェCafé & Labo」は、構内の農場で育つ牛から搾られた新鮮な「北大牛乳」や、店内工房で加工したチーズ・アイスなどを味わうことのできるマルシェ併設のレストラン・カフェ。株式会社北海道農村研究所がその運営を担っています。
お店のシンボルともいえる「北大牛乳」の牛の歴史は古く、クラーク博士が「札幌農学校」を開いた頃にまでさかのぼるとか。牛本来の生き方を尊重した“「草で牛を飼う」が当たり前になるように”。そんな酪農のあり方を実践しつづけるお店に込められた想い、そして牛乳へのこだわりに迫りました。
お店がはじまったきっかけの一つには、農村研究所が北海道大学の学生らとともに牛を育てるプロジェクトを行う中で見えてきた課題感があったのだといいます。
「あくまで研究の一環としていたため“北大牛乳”としては市場に流通しておらず、廃棄されてしまう現実がありました。自然本来の育ち方をしている貴重な牛乳ということもあり、一般の方にももっと届けていきたいという想いがあったようです。」と、語ってくれたのは現在店長を務める山本 あやめさん。
本州で10年ほど飲食店の店長職を経験した山本さんは、「いつか地元である北海道へ」との想いを募らせていた頃、ご縁があり「北大マルシェCafé & Labo」に携わることになったのだとか。
「立地柄、観光で来られる方や海外の方の利用も多くて新鮮ですね。」と、話すすぐそばで海外のお客さまにきびきびと笑顔で対応する姿に、こちらまで顔がほころんでしまいます。
そんな連綿とつづく歴史ある農場では、「放牧」の形をとり、牛が自由に動き回ることのできるストレスの少ない環境下での飼育を実践しています。
「一般的な乳牛は穀物を摂ることが多いんですが、北大農場の牛はみんな牧草を食べて育ちます。夏はみずみずしい生えたての牧草を、冬は乾燥させたものとトウモロコシを発酵させたものを飼料にしていて、輸入穀物に頼らず“草で育つ牛”というのはめずらしいんです。」
“牛は本来草を食べて生きる動物”。だからこそ、それがたとえ非効率な方法であっても自然の営みや循環を大切にする。“当たり前でありつづけること”を大切にする根底の想いは、揺らぐことはありません。
そうして北大農場から届けられる牛乳は、店内の工房で低温殺菌されたあとに、モッツァレラチーズやアイス・ジェラートなどに加工していくのだそう。
低温での殺菌を選んでいるのは、“できるだけ風味を損なわないように”するため。ノンホモ牛乳(均質化をしていない)なので、より自然の生乳に近い風味を味わうことができます。
季節によって牛が食べるものが異なることもあり、夏はさっぱりとした味わい、冬は濃厚な味わいに。四季の移ろいや日によって少しずつ味わいが変わるのも、自然本来のおいしさを追求しているからこその魅力です。
学生をはじめ地元の方はもちろん、旅の合間に立ち寄る方も多い「北大マルシェCafé& Labo」。モッツァレラチーズを活かした料理がそろう中でも、特に味わってほしい山本さんのおすすめは、ランチメニュー限定「北大牛乳モッツァレラチーズハンバーグ」です。
オープン当初から、塩分を加えずにチーズ本来のもつ味わいを引き出すことを徹底しているという、モッツァレラチーズが乗ったジューシーな熱々ハンバーグに、チーズの製造過程でできる栄養価の高い「“飲む点滴”ホエー」を使用したミネストローネスープ付きのセットなのだとか。
ランチメニューには、小さいサイズの牛乳も付くうれしいサービスもあるそう。“その日ならではの味”との新鮮な出会いを楽しみながら、北の大地で育まれる自然の恵みに想いを馳せる。そんなひとときが、旅先での食事の時間をより豊かで味わい深いものにしてくれそうです。
「基本的にメニューにはできるだけ北海道産の素材を使うようにしています。人気のジェラートに使用されているブルーベリー、ハスカップ、カップアイスのラズベリーなどは、実は余市(よいち)町にある北大の農場で作られたものなんですよ。」と、山本さん。
「札幌駅から近い中心地で、これだけの自然を感じられるお店はなかなかないと思うので、その点を楽しんでいただけたらうれしいですね。」
都会のにぎやかな雰囲気から一歩足を踏み入れれば、そこに広がっていたのは森のような雄大な自然。“当たり前を届けたい”。そんな想いが込められたこの地ならではの空間や料理に触れたとき、また足を運んでみたくなるような心おどる気持ちがきっと芽生えることでしょう。
北大マルシェCafé & Labo
住所:北海道札幌市北区北9条西5丁目 北海道大学 百年記念会館1階
電話番号:011-706-3213
アクセス:JR「札幌駅」より徒歩10分程度
HP:https://marche-cafelabo.com/
SNS: https://www.instagram.com/hokudaimarche/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。