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2024.03.15

「野口染舗」日本の染色文化と“ものを大切にする心”に触れる「天然染め体験」

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「野口染舗」日本の染色文化と“ものを大切にする心”に触れる「天然染め体験」

札幌中心部の「大通」駅から地下鉄で1駅、利便性の高い場所にある「白石区・菊水(きくすい)」。まちの発展に重要な役割を果たしてきたとされる「豊平川(とよひらがわ)」がそばに流れるエリアは、古くから豆腐店や醤油の醸造会社などがお店をかまえてきました。

1948(昭和23)年には、京都「野口染工(せんこう)」から来道した野口繁雄(のぐち・しげお)氏が「野口染舗(のぐちせんぽ)」を創業。着物を洗うために欠かせない「良質な水」が流れていることも、この地で物語をはじめる後押しとなりました。

着物のお直しに関する相談窓口であり、業者間を取りもつ「悉皆屋(しっかいや)」として、北海道における染色文化を牽引してきた「野口染舗」。日本の染色文化と、ものを大切にする心を受け継ぎながらも挑戦をつづける背景にあるものとは。

5代目で、現在は取締役を務める染色職人、野口 繁太郎(のぐち・しげたろう)さんを訪ねてお話を伺いました。

 

海を越えた先で味わった「悔しさ」が原動力

お店から離れたエリアで生まれ育ったことも相まって、幼い頃から家業との接点をもつ機会が少なく、サッカーに明け暮れていたという野口さん。「長男だからいつかは...」との想いをもちつつも、向き合うことができず遠巻きに見ていたのだとか。

転機となったのは、サッカーを卒業し、アルバイト先として選んだ飲食店でのお客さまとの出合い。「君、おもしろいから海外に行ってみなさい」と勧められるがままに海を渡った先で味わった、家業である着物について何も語ることができない「悔しさ」と「情けなさ」。その体験が、野口さんを突き動かすこととなりました。

「私自身がこれだけ熱量高く活動をつづけられているのは、当時の悔しい気持ちがあったからこそ。何をしていても、あの時に味わった気持ちが忘れられないんです。」と、野口さんは語ります。

 

「着物文化」を、より身近なものに

きっかけとなった体験から、家業である和装業界で「自分だからできることがあるのではないか」と思い直した野口さん。面接を経て2006(平成18)年に入社してからは、すべての業務をイチから学び、並行する形でこれまでにはない新たなエッセンスを加えていきました。

「日本人と着物の間にできてしまった距離を縮めること」を目指し、デニム生地でつくる新たな着物の形「着流しデニム」やカジュアルキモノブランド「Shi bun no San(シブンノサン)」をプロデュース。“着物文化をより身近に”との想いは、当初から変わることはありません。

 

この地ならではの「染色」を追い求めて

創業から70年を迎える頃には、着物にとどまらず新たな染色の形を模索。予測ができない変化の激しい時代の中で「『野口染舗』がこの地だからできること」とはなにか。そう考え必死に動く先で知り合ったバリスタとの会話で「コーヒーかすが大量に廃棄されている」という現実を知ります。

「札幌は昔から喫茶文化が根付くまちで、コーヒーも多く飲まれています。だからこそ話を聞いた時に“これだ!”とピンとくるものがあり、“捨てるものをもう一度活躍させるものづくり”ができないかと。最初は図書館に通い詰めて勉強しましたよ」と、笑顔を見せる野口さん。

そのほか、ワインを造る際にでてしまう葡萄の搾りかすやアロニアなど、さまざまな植物を使用した染色を生み出しており、資源として循環させることで「ものを大切に長く使いつづける心」を継承しています。

 

生命力あふれる色を引き出す「天然染め体験」

そんな土地柄を活かした染色を追求する「野口染舗」では、文化を伝えるため、予約制の「染色体験」をワークショップ形式で開催しています。「手軽にものが手に入れられる時代だからこそ、ものづくりの価値や奥深さを知ってほしい」という想いが込められた体験には、年代や国籍などを問わずさまざまなバックグラウンドをもつ方が訪れるのだそう。

ハンカチや風呂敷、ストールに、マルシェバッグまで。特に化学染料を一切使用しない「天然染め」でつくられたものは、自然がそのまま映しだされたような風合いで、使用する場所やシーンを選びません。

 

「染め」のもつ表現力は無限大

生地を媒染液に浸すことで色の定着を助ける役割を果たす。
また、媒染剤として用いる金属の種類を変えることで、さまざまな色味を実現することができる

化学染料とは異なり、天然染めに用いられる原料はすべて自然界のもの。染色作業に時間を要するのはもちろんのこと、腐らせないように乾燥をさせたり、涼しい場所で保管をしたり。保存方法にも気を配ることが求められます。

そうした難しさがある反面、幅広い色彩を繊細に表現できるのは「天然染め」ならではの魅力の一つです。一枚の生地に対して、どのような色味にしたいのか、染め模様はどうするかを決めた上で、布に含ませた水分量を調整し、折り方や絞り方、色を定着させるための媒染剤(ばいせんざい)を変えることで表情豊かに仕上がります。

 

染色を通して感じる、唯一無二の温もり

「染色体験をしている時って、みなさん本当にキラキラした笑顔を見せてくれるんですよ。家庭料理と似ているところがあると思うんですが、自分で手を加えたものを実際に日常で使うことができるという価値って何にも代えがたいですよね」と、野口さん。

体験を通して染色に触れることができるのはもちろん、「自分の手でつくることで感じられる温もり」が、旅の思い出をさらに色濃いものにしてくれそうです。

 

この先も「人生の喜びと感動を生むためにお手伝い」を

「捨てるを染める」からはじまった「野口染舗」の新たな染めの形は、さらに進化を遂げます。より北海道らしい染めを求め、森の成長を促すために間伐(かんばつ)された白樺に着目。天然染めブランド「BetulaN(べチュラン)」と名付け、この地にひそむ活用しきれていない素材に、新たな息吹を注いでいます。

「私たちが目指すのは、“人生の喜びと感動にお手伝い”です」と、この先も大切にしたいことを言葉にしてくれた野口さん。

時代が移り変わっても、自分たちだからできることで、関わる人に喜んでもらえることを。これまでの歩みを胸に、創業80年を見据えた「野口染舗」の挑戦はつづきます。そう、かつて多くの人が海を渡り、この地を切り拓いてきたように。

 

野口染舗(のぐちせんぽ)
電話番号:011-811-3816
住所:札幌市白石区菊水8条2丁目2-9
アクセス:地下鉄東西線「菊水駅」より徒歩15分程度
HP:https://ngsp.co.jp/
SNS:https://www.instagram.com/noguchisenpo/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。