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2024.02.29

豊かな映画文化を発信する、小さな映画館「シアターキノ」

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豊かな映画文化を発信する、小さな映画館「シアターキノ」

札幌の中心部に位置する「札幌狸小路(たぬきこうじ)商店街」は、北海道で最古の商店街の一つとして知られ、その歴史は明治初期にまでさかのぼります。すっぽりと覆われた長いアーケードがつづく路には、約200軒の店舗がずらりとならび、今もなお多くの人々でにぎわっています。

そんな商店街を奥へと進んだ場所にあるのが、1992(平成4)年にオープンした「シアターキノ」です。客席数29席という規模は全国的にみてもめずらしく、市民出資型のミニシアターとしても注目を集めてきた映画館。数年後に移転と増席をし、現在の場所でより多くの方が映画に触れられるようになりました。

これまでに上映された作品数は6,000本を超え、数多くの監督・キャスト・スタッフを招いたトークイベントを開催。また、映画上映のみならず、映画講座やワークショップなどの実践を重ね、コミュニティシネマとして豊かな映画文化を創りつづけてきた「シアターキノ」。映画館としてのこれまでの歩みやその魅力を、支配人の中島(なかじま)ひろみさんに尋ねました。

 

「無ければ創る」からはじまった物語

ビデオ技術を用いた映像芸術「ビデオアート」が全盛期だった当時、今のキノからさほど遠くない場所で映像ギャラリーを営んでいた中島さん夫婦。“映画は観に行くもの”として、ミニシアターや大型の映画館へ出かけていくのが日常でした。

そんななか、時代の流れとともに足しげく通ったミニシアターが続々と閉館。「観たい映画が観られなくなってしまう。」という危機感が中島さん夫婦の背中を押し、無くなるなら創ろうと、全国のミニシアターに足を運ぶところから「シアターキノ」の物語ははじまりました。

行動を積み重ねたことでさまざまな繋がりができ、アートや芸術文化に親しみのある方々のたくさんの応援を受けてきた映画館は、現在中島さん夫婦のほかに映写スタッフ3名と、50名ほどのボランティアスタッフが力をあわせて運営を行っています。

 

多様な国の文化を発信する場

「シアターキノ」の魅力は、なんといっても中島さんのフィルターを通して選ばれる、心に響く作品の数々。“人生が感じられるもの”や”可能性にあふれたエッジの効いたもの””世界観を変えてくれるもの”などをテーマに、多様な国と文化について描かれた作品を幅広く上映しています。

もちろん、中島さん夫婦が納得している作品であることが大前提。一度は必ず目を通してから選定するというスタイルも、オープン当初から貫かれています。

 

「自分たちの役割は、初心を忘れずにいろいろな国の文化を発信すること。常に幅広い作品を紹介できるよう、感性を鍛えることも大切にしています。」と、力を込める中島さん。そこには、五感を揺さぶられた過去の映画体験が影響しているのだといいます。

心にもやもやとした気持ちを抱えている頃に観た海外の映画をきっかけに、国や言語の違う映画に触れて感じた”映画はひとくくりでは語れない””自分はもっと自由でもいいのかもしれない”という気持ち。”これまで考えもしなかった視点に気付かされる体験”が指針となり、作品選びを支えているのです。

 

旅先で楽しむ、それぞれの非日常

「シアターキノ」を含め、狸小路やすすきのエリアには映画を愉しむことのできる場所が点在しているのも魅力の一つ。足を運ぶ方のなかには、映画を目的に旅先を選ばれる方や、「シアターキノ」のなかで複数の作品をはしごする方、いくつかの映画館を観てまわる方、出張で訪れた方が仕事終わりに楽しみに来ることもあるのだとか。

スクリーンの前で没頭できる体験は、それぞれの日常へと戻っていくための大切な非日常として、今や欠かせないものとなっています。

 

「キノカフェ」で余韻に浸る

作品を観終えたあと、その余韻に浸りたい時には、館内併設の「キノカフェ」でゆっくりと過ごすこともできます。木の温もりや古本に囲まれた穏やかな空間で、気になるシーンを思い返してみたり、作品がはじまる前のソワソワとした気持ちを落ち着かせたり。スクリーンから離れてぼんやりと考えを巡らせる時間が、より心地よさを増してくれます。

 

作品までの時間にサクッと食べたいときにはサンドイッチ、時間にゆとりのある方は、ドリンクとセットにもできる「野菜と豆のキッシュプレート」でしっかりとお腹を満たすことができます。新鮮なサラダに、金時豆と野菜がぎっしりつまったキッシュは食べ応え十分。夜はバーとしても営業しているため、観たい映画のスケジュールに合わせて利用することが可能です。

 

心が上向きになる映画体験を

映画を通して伝えたいことについて「観る作品を決めて、わざわざ足を運び、お金と時間を使って物語を観る。そして観終わったあとには一人で考えたり、誰かと話したりして、自分のなかに作品が刻まれていく。そういう一連の豊かな時間を生み出すのが映画の素晴らしいところ。」

「『シアターキノ』での映画体験が、少しでも心を明るくしてくれたり、明日も頑張ろうと思えるような一つの要素になったら嬉しいです。」と、語ってくれた中島さん。

映画は、観る人に届いてはじめて完成するもの。その橋渡しをする場として、この先の映画館で紡がれる物語が楽しみになるお話の数々でした。

この地での「非日常」を味わう体験の一つとして、「シアターキノ」は訪れる人の心を照らしつづけます。

 

シアターキノ/ キノカフェ・ワインと古本、キノバー
電話番号:011-231-9355(シアターキノ)/011-231-9775(キノカフェ /ワインと古本、キノバー)
住所:北海道札幌市中央区狸小路6丁目 南3条グランドビル2F
アクセス:
地下鉄南北線・東豊線・東西線「大通駅」より徒歩約10分
地下鉄南北線「すすきの駅」より徒歩約10分
市電:すすきの行き「資生館小学校前」で下車し、徒歩約2分
市電:4丁目行き「西8丁目」で下車し、徒歩約5分
HP:https://theaterkino.net/
SNS:https://www.instagram.com/theaterkino/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。