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2024.08.15

人が集い会話が生まれる「昭和レトロ」な空間

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人が集い会話が生まれる「昭和レトロ」な空間

「昭和日常博物館」は、北名古屋市の穏やかな住宅街に佇み、昭和時代の日常を体感できる場所として幅広い世代から愛されています。図書館に併設されたこの博物館は、名古屋駅から名鉄犬山線で約14分の西春駅からバスや徒歩でアクセス可能です。

館内には、昭和時代の懐かしい小物や看板、再現された路地や店舗が展示されており、訪れる人々を昭和の時代へと誘います。また、当時の典型的な家屋も忠実に再現されており、昔ながらの台所や応接間を通じて、その時代の生活を身近に感じることができます。入場は無料で、定休日以外は気軽に訪れることができるのも魅力です。

街並みが再現されている展示エリア

街並みが再現されている展示エリア

1993年から昭和時代の生活資料の収集を本格的に始めた「昭和日常博物館」は、現在約15万点のコレクションを誇り、そのうち約1万点が常設展示されています。豊富な展示品が、昭和の世界をたっぷりと堪能させてくれます。

古墳時代から昭和時代に変遷していった理由

「昭和レトロブームは30年ほど続いており、その魅力は世代を超えて広がっている」と語るのは、市橋芳則さん(前館長、現在は学芸員)。市橋さんは、「北名古屋市歴史民俗資料館」が1990年(平成2年)に開館する2年前から、博物館の立ち上げに関わってきました。当初、この資料館は古墳時代の埴輪などを展示する施設でしたが、地域から寄贈される品の中には昭和時代の生活用品も多く含まれていました。市橋さんは、寄贈品の対象ではないために断らざるを得ないことに心を痛めていましたが、昭和時代の「モノ」を収集することを思案するようになりました。

「紀元前の遺物を扱う一方で、1950年代から1960年代の大きな生活の変化を反映する『モノ』が見過ごされ、廃棄されている現状に問題意識を抱いていました」と市橋さんは語ります。限られた予算の中で、多くの人に利用される場所を作るため、市橋さんは1993年(平成5年)から昭和時代の生活資料の収集を本格的に開始します。

家屋の部屋ごと再現されているエリア

家屋の部屋ごと再現されているエリア

「不要だからという理由からではなく、思い出深いから大切にしたいという思いで寄贈を希望される人が多かった。」と、市橋さんは語ります。市橋さんは持ち主のモノにまつわる思い出もヒアリングし、丁寧に全てを記録していました。現在では、河出書房新社から5冊の書籍となって出版もされています。思い出がたくさん詰まったモノだからこそ、見る人にも懐かしさや温かみを感じるのかもしれません。

笑い声と会話が生まれる独自の展示手法

展示エリアは、暮らしが思い描けるようなキャッチコピーでカテゴライズされています。

展示エリアは、暮らしが思い描けるようなキャッチコピーでカテゴライズされています。

昭和日常博物館では、「モノ」を通じてその時代の暮らしを体感できる展示手法が取られています。例えば、電気釜一つを展示する場合も、その周辺に関連する「モノ」の存在も重要視していると、市橋さんは教えてくれました。

カレーのパッケージ、皿、コップ、スプーンなどを組み合わせて展示することで電気釜のストーリーが浮かび上がってきます。電気釜を長い文章で説明するのではなく、短くわかりやすいキャッチコピーとともに、一つのテーマにそって展示することで、見る人がストーリーを体感できると、市橋さんは語ってくれます。

昭和の台所の風景を再現したスペース

昭和の台所の風景を再現したスペース

訪れた人々は自身の思い出や経験を自然と思い出し、語り合うことでコミュニケーションが生まれる空間になっているのが他の博物館とは異なる点です。「若い人達が展示を目の前にして『キャー!可愛いー!』と悲鳴が上がるんですよ」と嬉しそうに語ってくれた市橋さん。この博物館では、若い人も含めて全世代の人が昭和時代を愛でていて、現在笑いの絶えないにぎやかな空間となっています。

懐かしい写真や音楽、家庭用品を使い、過去の経験や思い出を語り合う心理療法は、回想法と言われ、脳の活性化や心を元気にする社会的なアプローチでもあります。『昭和日常博物館』の展示は、そのような場となったと嬉しそうに市橋さんは語ってくれました。

地域貢献や観光としての博物館の役割

隣接する市役所カフェ「ゐなカフェ」のコラボメニュー「レトロ昭和カレー」

隣接する市役所カフェ「ゐなカフェ」のコラボメニュー「レトロ昭和カレー」

昭和日常博物館は、地域貢献や観光の面でも重要な役割を果たしています。フジパン西春工場とコラボレーションした商品が発売されるなど、昭和レトロは地域おこしにも一役買っています。また、博物館の隣にある市役所のカフェ「ゐなカフェ」では、「昭和日常博物館」とのコラボメニューとして「レトロ昭和カレー」を楽しむことができます。このように、「昭和日常博物館」は地域のコラボレーションも盛んです。

現在館長を務める伊藤明良さん。

現在館長を務める伊藤明良さん。

現在館長を務める伊藤明良さんは、「『昭和日常博物館』の魅力は世代を問わず展示を前にして会話が弾み笑顔になれる場所です。博物館としてだけではなく、地域の交流や観光のハブとして貢献していきたい。」と博物館の未来への展望を語ってくれました。

昭和日常博物館は、単なる昭和時代の展示施設ではなく、人々が集い、思い出を語り合う笑顔が絶えない場所として、これからも多くの人々に活力を与えていくでしょう。


施設名:北名古屋市歴史民俗資料館(昭和日常博物館)

住所:〒481-0006 愛知県北名古屋市熊之庄御榊53番地 北名古屋市図書館3階

アクセス:名鉄 犬山線 西春駅 徒歩 25分

HP:https://www.city.kitanagoya.lg.jp/rekimin/

*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。