2024.05.31
函館市電電停「宝来町」から「青柳町」に向かう緩やかなカーブと坂道は、函館を紹介する上で欠かせない場所。この辺り一帯のノスタルジックなエリアは「ロマンス坂」と呼ばれています。開けた空・市電・路面が3層に重なる、函館の中でも人気の撮影スポットです。
函館西部地区の中でも、青柳町や谷地頭といったエリアは、元町や末広町などのエリアとは異なり、どちらかというと住宅街の雰囲気を強く感じます。しかしながら、古くからある住宅や建造物も多く、歴史名所も多く存在する場所でもあるのです。特に、青柳町はロマンス坂の基点であることから、近年では新しいお店が開店するなど、市民にとっても隠れた人気スポットになりつつあります。
「喫茶フリーデン」は、そんな青柳町電停の目の前にあり、過ぎゆく市電を眺めながら一休みできる、カジュアルな隠れ家のようなお店です。
店主を務めているのは、函館市出身のイラストレーター 和土 遼(かづち りょう)さん。「喫茶フリーデン」は八雲町のチャレンジショップから、2020年に歩みを始めました。和土さんが長年想い描いてきた「西部地区でお店を開きたい」という夢を叶えたく、八雲町に住みながら故郷である函館へ何度も足を運び、理想の空間を探し続けたのだそう。そうして2022年、現在の場所に「喫茶フリーデン」は移転、ついに西部地区のお店の仲間入りを果たしたのです。
しかし、八雲町の開店当初から、時代はコロナ禍。その真っ只中にお店を移転して問題はなかったのですか?と伺うと「私たちは、当時から変わらず『小商い』という形を取っています。平日は別の仕事、でも夢を叶えるために、もう一つの選択として、週末だけの喫茶店にしたのです。」と和土さんは話します。小商いは、簡単に言えば副業。実に現代らしい開業の仕方です。
メインとなるメニューは、全て1杯600円というわかりやすい価格の、カラフルなノンアルコールカクテル。物語、小説、映画などをモチーフに考案したそうですが、「メニュー名を見たら、私たちが何をイメージして作ったものなのかわかる人にはすぐわかってしまいますね。」と、和土さんと旦那さんが笑いながらこっそり教えてくれました。
メニューのうちいくつかはアイスをトッピングでき、クリームソーダにして楽しむことができます。このノンアルコールカクテルを市電の見える大きな窓に置くと、日光に照らされ、手元がカラフルに彩られます。幼い頃に見た色とりどりのビー玉のような、甘酸っぱいキラキラとした思い出のような鮮やかなグラデーションが、ちょっぴりレトロでアートな時間を演出します。
もう一つ注目したいのが、カウンター横のスペース。ここには、和土さんが描いた水彩と色鉛筆を使ったイラスト原画やグッズが展示されています。お店のドリンクをモチーフとして描いたイラスト、個展に出展した作品もあり、一角はまるでギャラリー。学生時代から描き続けてきたという手描きのイラストは、ロマンス坂の雰囲気と相まって、ちょっぴりレトロな雰囲気のお店をぐっと温かくしてくれます。
また、和土さんがラベルをデザインした、焼き菓子KUUのお菓子も並びます。製作されている方はお二人のご友人で、八雲時代から変わらず納品を続けてくれているのだそう。香ばしく柔らかな甘さのお菓子が、店内での時間に、アートとはまた違う温もりのエッセンスを加えます。
大きく開けた窓から見える市電、ノンアルコールカクテル、イラスト、そしてお店の雰囲気…全てが函館で過ごす時間をアートに演出します。八雲町時代を経て、長年の夢を果たした和土さん。夢が詰まった色鮮やかなドリンク越しに街を眺めれば、また違った函館の景色に気付けるかもしれません。
喫茶 フリーデン
住所:北海道函館市青柳町21
アクセス:函館市電「青柳町」徒歩1分
SNS:https://twitter.com/freedenhakodate
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。