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2024.06.07

多くの人が関わり守り続けた歴史ある日本家屋のカフェ「茶房 菊泉」。五感での特別な体験は、きっと誰かに教えたくなる。

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多くの人が関わり守り続けた歴史ある日本家屋のカフェ「茶房 菊泉」。五感での特別な体験は、きっと誰かに教えたくなる。

教会群が立ち並ぶ元町エリアで、一際目を引く平屋建ての日本家屋があります。年代を感じる大きなクロマツや、函館市電の石を使って作られたという玄関を持つ「茶房 菊泉(さぼう きくいずみ)」です。

 

 

かつての函館の商業を支えた酒屋「菊泉」

函館山麓の18本ある坂のうちの一つで、元町にある「日和坂(ひよりざか)」。坂が途中で途切れて2段作りになっているのが特徴です。函館港 旧桟橋から山へ向かって伸びるこの坂沿いには多くの元商家やその邸宅が並びます。

函館は、かつて江戸時代に奉行所が配置され、重要な施設が多く置かれたことから政治や商業の中心地として発展しました。特に、日米和親条約で開港されて以降、大使館、教会など重要な施設が設置され、伝統的な日本家屋の造りだけでなく、西洋の文化がミックスされた和洋折衷の街並みが誕生しました。函館市では、この明治〜昭和初期に建てられた建物を伝統的建造物として保護しています。

茶房 菊泉は、1990年(平成2年)に、和風平屋建の妻入り建物としては、当該地区では唯一のものである(引用:函館市ホームページ 観光・歴史 歴史・文化財 伝統的建造物一覧)として、伝統的建造物に指定されました。

妻入り建物は玄関を屋根の端面(妻)側の壁に設けており、その上部が三角形になっているのが特徴です。軒下には菊泉を象徴する看板があり、目にした多くの方は「酒屋だ」と気づくことでしょう。

菊泉は1885年(明治15年)創業の酒屋で、函館番付にも名を連ねるお店でした。茶房として活用されているこちらの建物は1910年(大正10年)にお店の主人とそのご家族が住む別邸として建設されたものです。家業は1994年(平成6年)で廃業しましたが、その後もこの邸宅は住居として利用。函館市伝統的建造物として指定されたのをきっかけに、カフェとして活用され始めたのだそうです。

 

 

コンセプトを新たに、五感で楽しむ“新しくも懐かしい菊泉”へ

年代を感じる引き戸を開けると、現在の茶房の店主である義山 友紀(よしやま ゆき)さんが出迎えてくださいました。

義山さんはご家族の関係で函館へ足を運ぶようになり、この街にすっかり魅了されたのだとか。元町でカフェを経営していましたが、この茶房菊泉が閉店すると聞き、「函館、そして元町を象徴するこの建物を守らなけらばならない」「もっと建物のことを知ってもらいたい」その想いで、引き継ぐことを決意し、茶房運営の後継者として応募したのだそう。

義山さんの手による新たなお店のコンセプトは“新しくも懐かしい菊泉”。「古き良き日本の素晴らしさを五感で体験してほしい」と、メニューは和スイーツやレトロなものを選び、店内の装飾にも伝統的な日本らしいアイテムが散りばめられています。テーブルや装飾品を置いている棚類は、この菊泉が生活の場だった頃にも使用されていたのだそう。

時代を感じる作りの家具たち。菊泉の雰囲気を演出するのに一役買っています

 

明治20年発行“函館有圓盛商一覧表”のコピーも展示されており、菊泉の記載もあります

 

 

自分好みに仕上げる体験型メニューで、さらに印象に残る特別な時間に

今回、義山さんが引き継いだことで、茶房で提供するお料理はすべて一新。“みんなで大切にしたい菊泉での時間”、“誰かに伝えたくなるような菊泉での体験”をコンセプトに、お客様の記憶に残るよう工夫された和のメニューが並びます。

特に、オープンしてから継続して人気だというのが「自分で焼くおだんごセット(税込1,380円)」です。七輪の直火でお団子串を香ばしく焼き上げ、2つのたれ(自家製のみたらし、北海道産きなこと沖縄県産黒糖を使った黒蜜)、北海道産の小豆を使用して作られたあんこ、桜葉が練り込まれたモナカと共にいただくというもの。

お団子は現代の私たちにとっても馴染みのある和菓子ですが、自分の手で焼いたことがある方は少ないのではないでしょうか。七輪の網の上にお団子を置いてみると、パチパチという音と共に香ばしい香りがあたりに広がります。こまめに転がして焼き上げると、外はパリパリ、中はアツアツふんわりもっちりとした焼き団子が完成します。

「こまめに回すと全体が綺麗に焼けますよ」(義山さん)

 

お団子の楽しみ方は人それぞれ。お好みで味付けしていただきます。桜のモナカは、あんこやお団子を挟んでも、そのまま食べても美味しく楽しめます。

焼き上げる香りとその感触、味付けのワクワク感、焼きたてでしか楽しめない独特の食感や、頂きながら楽しむ菊泉の古き良き家屋の佇まい…全てが1つになった時、懐かしさと、知らないはずの時代の情景が眼前に再現されます。これがお店のコンセプトである、菊泉の「体験」なのだ、と気付くはず。

 

 

「菊泉」が持つ歴史に対する、義山さんの温かな想い

今回、お店を引き継ぐにあたって、これまでのお店のスタイルとは全く異なるものになるため、コンセプトやメニューなどは「建物の所有者である花井さんに理解していただきたいという思いがあった」と、義山さんは言います。そのため、プレゼンテーションのほか、ビデオ会議やメッセージアプリで都度相談するなど、丁寧な情報共有をしてきたそう。

「私にとっては、菊泉の全ての場所がお気に入り。だからこそ、菊泉という建物の歴史についてお店を訪れる人に知っていただきたいと思っています。そのためには私も菊泉やこの建物のことを知らないといけないし、正しくお話できるようになりたいんです。ただお料理を提供するだけではなく、使命感を持って運営していきたいですね」そう笑って話す義山さんの眼差しに、菊泉の歴史に想いを寄せる温かな心遣いを感じました。

 

茶房 菊泉
電話:0138-22-0306
住所:北海道函館市元町14-5
アクセス:函館市電「末広町」徒歩7分 
HP:https://sabokikuizumi.com
SNS:https//www.instagram.com/sabou.kikuizumi
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。