2024.07.02
NEIGHBORS
「久しぶり、元気だった?」
「今日も寒いね」
「おやすみなさい」
家のようにあたたかい、ぬくもりを感じられる場所。
2024年4月に「帝国湯」は再開から1年を迎えました。
お風呂の様子を見守る番台
「あっという間だったような、長かったような」
綾子さんはこの1年を語ります。
「番頭になってから、かつての母の大変さを実感しています。番台交代の前に家族のご飯を作り、片付けも。こんな大変なことをやってのけていた母はやっぱりすごいです」
続けて綾子さんは兄、和男さんの存在がとても大きかったと話します。
「この1年、兄が一番大変だったと思います。自分の仕事が終わった後、夜の締め作業なども兄がやってくれるんです。兄には頭が上がりません。兄がいるから私も頑張れるんです。私の頑張りを兄も認めてくれているから手伝ってくれているんです」
そんな綾子さんの言葉に和男さんは、
「女性に薪とか釜は大変だよね。普通は番台だけだよ。どっちもやっていて大変だよ。俺は番台には座れないからね。男が釜を守って、女は番台。本来はそういうもんだと思うけどね。なのにそれを両方やってるんだよ。頑張っているのを知っているし、ここを続けていくために支えているだけだよ」
そんなお二人は、「労力は使うけど、その分いろんな人に会えるよね。結局、うちの家族は人が好きだよね」と笑顔で話してくれました。
帝国湯のあたたかさをこんなところにも感じます。
湯加減を確認する綾子さん
「人が好き」という言葉について綾子さんは、
「お店を開ける前までは釜の温度を下げないようにとか、お湯が張れているかとか、自分のことで精一杯。お店が開いたら釜も見ないといけないし、湯船も見ないといけない。けど、いざお客さんが来ると、お客さんとの触れ合いを楽しみにしてしまうんです。休業前からの常連さんも来てくださいますが、実は復活してからの一年で常連になってくださった方も多いんです。新しい方との出会いもこの仕事の楽しみでもあります」と、話します。
綾子さんが教える昔ながらの銭湯の楽しみ方
最後に、帝国湯を楽しむための心得を綾子さんに教わりました。
入浴者心得
右から、薬湯、浅めのジェットバス、深めのバイブラバス。こちらは女湯の浴槽
綾子さんに聞いた帝国湯の心得
1.まずは体を洗い流す
2.帝国湯では、薬湯(タイルが赤い浴槽)が、適温くらいのお湯になっているため、そこに入って体を温める。
3.真ん中と一番左の浴槽は、「あつゆ」。
お湯の温度が熱いので、いきなりお湯に入らず、足から順番に上半身まで「掛け湯」をして体を慣らす。
4.体が慣れたら浴槽へ。
もし、これでもまだ熱ければ真ん中の浴槽は水を入れてもOK (肩まで浸かったら水を止めましょう)
※銭湯によってルールが異なります
帝国湯の温度管理は自動ではないため、一定の温度を保てるように釜の様子を見てお湯の温度を触って確かめて、入っているお客さんの表情や体の色を確かめながら調節しています。
富士山の銭湯絵は故・早川利光氏によるもの
銭湯の特徴でもある、富士山の絵。
「早川さんの絵は、波のしぶきが特徴なんだよ」と、和男さんが教えてくれました。
体が一瞬で真っ赤になる、ぴりりっと熱いお湯。
心と体がほぐされるような体験です。
お風呂から上がった後は、火照った体を冷やす涼しげな風を感じられるお庭でひと休み。
女湯の庭
男湯の庭
『銭湯すたれば人情もすたる』
詩人、田村隆一さんの詩の一節にあるように、銭湯文化が人のぬくもりを育みます。
新米番頭は、今日も火を絶やしません。
みんなの心に明かりをともすように。
帝国湯
住所:東京都荒川区東日暮里3−22−3
アクセス:常磐線三河島駅から徒歩8分
HP:帝国湯
X(旧Twitter):https://twitter.com/TeikokuY1916
Instagram:https://www.instagram.com/teikokuyu.nippori?igshid=ZDdkNTZiNTM%3D
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。