2024.05.31
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今や、北海道・札幌を代表する食文化の一つにもなっている「スープカレー」。出汁やスパイスの効いたさらりとしたスープに、肉や海の幸、食べごたえのある彩り豊かな野菜が盛り付けられた目にも美しいカレーは、一皿でまちの恵みをまるごと味わえるような魅力がたっぷりつまったソウルフードです。
1990年代頃からスープカレーを専門とするお店が増えはじめ、出汁のとり方、火入れや仕込みにかける時間、調味料やスパイスの調合、素材の活かし方など、それぞれに個性や哲学をもったお店の登場により、その味わいは現在にいたるまで進化をとげてきました。
幕を閉じたお店の味を完全再現し、復活
そんな多彩な味わいで地元民のみならず旅行者を魅了するスープカレーのなかで、「札幌でスープカレーが好きな人であればおそらく知らない人はいない」といわれるほどの名店「Curry SAVoY(カリー サヴォイ)」。
かつて、何度も通いたくなるほどのおいしさから「悪女のスープ」と呼ばれ、オーナー夫妻の人柄や、居心地のよいあたたかな雰囲気で多くの方に愛されていましたが、2017年に惜しまれつつも23年の歴史に幕を下ろすことに。
そこで「なんとか味を残したい」と立ち上がったのが、市内で「もつ鍋専門店 黒花火」などの飲食店を運営する、株式会社 IDATEN(イダテン)でした。
前オーナーの全面協力のもとに愛された味を完全に再現し、翌年にはJR札幌駅北口から徒歩数分の場所に店舗をオープン。「物語は、終わらない」をコンセプトに、受け継いだ味を今も大切に守りつづけています。
きっかけは、“心に残った感動の味”
完全復活をとげた「Curry SAVoY」の厨房で現在スープを作るのは、札幌市出身で店舗責任者を務める國井 星矢(くにい・せいや)さん。
これまでさまざまな職種での仕事経験を積んだ國井さんがお店に加わった背景には、“新しいことに挑戦したい”という気持ちの変化と、「SAVoY」の味に出会った時の感動があったのだといいます。
「スープカレーが好きで“いつか自分で作りたい”との想いもあり、料理を学んでいました。いろいろなお店のカレーを食べてきましたが、調味料の使い方といいますか、自然なうま味が強く心に残って......。“ここのカレーはすごい。この味を学びたい”と、明確に思えたんです」
手間ひまかけたこだわりの淡麗スープ
國井さんをはじめ多くの人の心を動かしてきたスープは、完成するまでに2日、さらに冷凍庫で2日寝かせ、4日ほどかけてようやく提供できるようになるのだとか。
1日かけて具材を煮込み、蒸らして味をしみこませ、再び火を入れ、今度は丁寧に手を使って濾(こ)していく。手間ひまかけてじっくりと仕込まれたスープには、牛骨・鶏ガラ・たまねぎ・にんじん・セロリ・りんごなど国産の野菜や果物のうま味が溶け込んでいます。
寝かす工程のあとに、大部分の油分を取りのぞくことであっさりとした淡麗なスープに仕上げる作り方は「SAVoY」ならでは。その滋味深く上品な味わいが、最大の魅力です。
幅広い世代から愛される味わい
「ークラシックー 悪女のスープ チキンのカリー」
お店が復活オープンしてから6年目の今でも、当初と変わらず反響があるのだそう。
先代が運営していた頃の「SAVoY」のスープカレーを学生時代に食べていた方が、道外で暮らすようになってからも帰省のタイミングで訪れたり、「小学生の子どもがこのお店のカレーが好きで」と、足を運ぶ方がいたり。
当時から味を知っている方にとっては「親しみのある懐かしい味」として、また、新しくお店に出会った方には「新鮮で発見のある味」として、世代を問わず幅広い層から支持を集めています。
「 ークラシックー 悪女のスープ シーフードのカリー」
昔ながらの「クラシック 悪女のスープ」は、盛り付ける具材によって味の印象が大きく変わるのも特徴の一つ。具材とスープを分けて調理するのではなく、一緒に煮込むことにより素材本来のうま味が引き出されています。
「チキンならチキン、シーフードならシーフード」一度注文したメニューを気に入り、訪れるたびに同じカレーを注文する方が多いのだとか。
「食べることで得られる元気であったり、栄養価も高いので活力になるんだと思います。もちろん“食べておいしい”というのは脳が喜ぶところではあるんですが、やっぱり体が喜ぶ感覚がありますね」と、國井さんはスープカレーの魅力について教えてくれました。
“真逆のスープ”への挑戦
提供がむずかしい日や、数にかぎりがある日も。店舗への確認がおすすめ
先代からつづく味を忠実に受け継ぐ「SAVoY」では、2023年に新たな試みとして「Re・SAVoY(リ・サヴォイ)」と称した“真逆のこってりスープ”を開発、提供をスタートさせました。
炊き方を変えた白濁としたスープに、焼き野菜や揚げ野菜が盛り付けられた食べごたえのある一皿。クラシックスープと真逆の工程をふむスープは、お店をより多くの方に楽しんでいただくための一歩でもあります。
その時の気分や好みに合わせて選択ができたり、友人や家族とベースのちがうスープを注文して食べ比べてみたり。正反対のスープがあることでより楽しみ方の幅が広がり、お店の新たな魅力へとつながっているのです。
守るのは“一皿に込められた味と、想い”
新しい挑戦をしつつも、やはりお店の根底にあるのは“変わらぬ味や姿勢を守りつづけること”。
「陶芸が好きだったというママさん(前オーナー)が、“作った器にどんな料理を乗せようか”と考えた時に、スープカレーをはじめることになったと聞きました。『SAVoY』のカレーはすごく綺麗に盛りつけをするんですが、そういったところからも人柄や料理に対する想いが感じられたんです」
「だからこそ、カレーから見える“ママさんが何を大事にしていたのか”その姿を想像しながら、背景にあるものも含めた味を守っていくことを常に意識しています」と、「SAVoY」のスープカレーに対するこだわりや想いを聞かせてくれた國井さん。
差し出された一皿には、“終わらない物語”と、愛されつづける“たしかな味”。そして心揺さぶる食の体験から育まれた“受け継ぐものとしての心”がたっぷりと込められていました。
Curry SAVoY(カリー サヴォイ)
電話番号:011-717-5959
住所:北海道札幌市北区北8条西4 ブランシャールBLD地下1階
アクセス:JR「札幌駅」より徒歩5分程度
SNS:https://www.instagram.com/currysavoysapporo/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。